視点
モバイル機器を生かすも殺すもMDM次第
2011/09/15 16:41
週刊BCN 2011年09月12日vol.1398掲載
ひと口にMDMといっても、標準化された製品が存在するわけではない。多少の乱暴さを承知でいえば、ユーザー各社のセキュリティやポリシー管理の考え方に基づき、多数のデバイスを中央で一括集中管理するためのソリューションがパッケージになっているものである。しかしながら、このMDMの導入の仕方次第では、モバイルデバイスの使い勝手が激変する。つまりは、モバイル機器を生かすも殺すもコントロール次第というわけだ。
ほとんどのMDMは、セキュリティポリシーの設定、デバイスのさまざまな機能のオン/オフを中央で管理できる機能を備えている。また、アプリケーションのバージョン管理やアプリケーションのリモートインストールなどにも対応する。さらに、デバイスの位置検出、リモート制御(ロック/ワイプ)などが可能となっている。これによって、端末管理者は、ユーザー個々がアプリをダウンロードしたりしてヘルプデスクがパンクするような煩雑な業務からは解放されることだろう。ところが、ユーザー側からすると、業務に使おうとしているフリーアプリや自らが購入した業務用アプリがインストールできないなどの不都合が生じる場合もある。これらはPCの時代にも経験した制約事項ではあるものの、普段から携行し、持ち出すことが前提のモバイルとPCを同列に議論することには無理があると筆者は考える。以前、このコラムでバラバラなセキュリティポリシーについての問題点を指摘したが、モバイルデバイスまで一律に対応せよと説いた覚えはない。
モバイルはこれまでITが不備だった業種・職種にもIT化による生産性・創造性向上の可能性をもっている。管理やセキュリティの手間を省く目的だけで一律設定し、個人の創意工夫を削ぐようなことがあってはならない。米国ではすでにBYOD(Bring Your Own Device)という個人端末の業務利用が始まっている。MDMはこうしたニーズにこそ応え、個人利用と企業利用の狭間を適切に埋めるソリューションとなってもらいたいと切に願う。
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