日本IBMの中堅市場戦略

<連載・日本IBMの中堅市場戦略>第5回 ユーザー事例 綾里漁業協同組合(下)

2011/09/08 20:29

週刊BCN 2011年09月05日vol.1397掲載

 日本IBMのパートナーであるシンエイシステム(中島浩章社長)は、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県大船渡市の綾里漁業協同組合(綾里漁協)の復興を、迅速にサポートした。綾里漁協は、日本IBMのパートナーであるシンエイシステムの尽力により、地震発生から1週間ほどで最低限のIT環境を整え、業務の再開にこぎ着けることができたのだ。

クラウド型バックアップを検討

綾里漁協
川上明参事
綾里漁協
佐々木伸一
経理指導係長
シンエイシステム
熊谷健課長
 「まず最初に情報収集に努めたのは漁船の被害状況だった」と、綾里漁協の川上明参事は言う。漁師が保有する漁船がなくなってしまったのか、残っていても修理すれば動かせる状況かどうかを、一つひとつ確認することから始めた。「組合員の多大な努力で、すべての漁船の被害状況の確認を、ほぼ2か月で完了させることができた」(綾里漁協の佐々木伸一・総務課経理指導係長)。

 佐々木係長は続けてこう話す。「漁船を管理するエクセルの台帳は、パソコン内に保存するのではなく、ファイルサーバーに保存して、そのデータを閲覧・編集する仕組みだった。もしサーバーを(完全浸水した)1階に置いていたままにしていれば、たった2か月の期間ですべての漁船を管理することはできなかったと思う」。

 震災前に610隻あった船は、修理が必要なものも含めて206隻に減った。しかし、状況が把握できたことで、自治体や政府に対する船舶修理のための支援要請も、他の漁協に比べて迅速に行うことができた。1階にあったサーバー群を3階に移すことを提案し、仮設事務所のITインフラ環境を迅速に整備したシンエイシステムのサポートがあったからこそ、実現できたことだった。

 震災から4か月が経った頃、シンエイシステムの熊谷健・営業部課長は新たな提案を行っている。それが、「クラウド型のバックアップ環境構築」である。従来はテープにデータのバックアップを取っていたが、遠隔地にバックアップデータを保存しておいたほうが安全とみて、日本IBMのクラウドを活用したバックアップ環境の構築を検討している。現在、その実現に向けて、日本IBMのパートナー&広域事業広域事業部パートナービジネス担当(東北地区)に所属する酒井邦博氏と打ち合わせている最中だ。

 未曾有の危機に直面しながらも迅速な業務再開を果たした大船渡市の漁協は、シンエイシステムという日本IBMのパートナーに支えられているのだ。(木村剛士)

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