クラウドアプリ界の異端 ブランドダイアログ~その“キセキ”を追う
<クラウドアプリ界の異端 ブランドダイアログ~その“キセキ”を追う>最終章 グループウェアをクラウド基盤にする次世代戦略が進行中!
2011/08/31 20:29
これは、オンプレミス(企業内システム)の世界ではなかなか実現できないことだ。クラウド専業のITベンダーだからこそ、やり遂げることができる。顧客の声から生まれた機能やサービスは数多くある。今年は、全国営業網の構築に向け邁進するとともに、外資系のビジネスクラウドベンダーに負けないサービスを目指しているが、徐々にその成果が出始めている。クラウド・サービスやグリッド・テクノロジーを武器に、日本で足場を固め、そして世界で活躍できるよう準備を進めている。日本企業に即した当社の新しいビジネスプラットフォーム戦略を実現するために、一気に突き進む。
KDDIとの提携で、全国販売網が構築へ向かう
――ソリューション本部東日本営業部 山崎裕介副部長
営業ならではの「実績がすべて」の使命を受け、CRM本部やR&D本部と連携して、5人の営業部員で全国を駆け回って導入を推進してきた。その結果、約1年半で800社以上、大企業から中小企業まで幅広い顧客が導入した。それでも5人で全国を網羅するのには限界がある。8月上旬に発表したKDDIとの業務提携では、全国営業網を得られることが最大のメリットだ。今後、KDDIとは、弊社営業部が有する営業スキルを共有し、スキルトランスファーを促進させ、新たな世界に羽ばたいていきたい。同時に販売代理店網の開拓にも力を注ぎ、多くの顧客に安全なクラウド・サービスであることを訴え、日本における情報系ビジネスアプリケーションでNo.1を目指す。これ以上、外資ベンダーにやられていては、日本人の誇りもプライドも失われてしまう。日本のITベンダーとして、日本の技術で守っていく。
世界に羽ばたくクラウド・サービスに育てる
問うた結果はいかに――。ブランドダイアログの社員たちが、稲葉社長の戦略・戦術にもとづいて製品開発・販売にあたっていることがよくわかった。一見すると、個性の強い稲葉社長が一人で奮闘しているようにもみえるが、理念はきちんと社員に伝わっていた。稲葉社長によれば「『GRIDYグループウェア』と『Knowledge Suite』は、企業のプラットフォームに変わっていく」という。これはどういうことか。例えば、Salesforce.comの場合、開発基盤であるForce.com上で開発したアプリケーションは、同社のパブリッククラウド上で簡単に連携できる。ただ、Force.comで開発されていないアプリケーションは、企業ユーザーが使うことができない。ブランドダイアログのクラウド型の「GRIDYグループウェア」と「Knowledge Suite」は、情報共有であるグループウェア機能をプラットフォーム(基盤)としてSFAやCRMなどの機能が備わっていて、顧客の要望に応じ、これら機能を隠すことができる。このグループウェア基盤の上にある機能と他社のアプリケーションをつなぐAPIを、11月中にも提供を開始する計画だ。
このAPIが提供されれば、システムインテグレータ(SIer)は、このグループウェア基盤の上で動くSFAやCRMなどの機能と連携した会計システムを提案できるようにもなる。ブランドダイアログの製品は安価で、SIerにとって単体売りだと粗利が薄いが、こうした“つなぐ”システム構築で、ビジネスチャンスをつくることができるのだ。Salesforce.comやGoogleなどとは顧客への提供方法や開発方法が根本的に異なり、“ブランドダイアログ基盤”と呼べるクラウド基盤上で、SIerはより広範なアプリケーションを顧客に提案できるのだ。
稲葉社長は「必要なサービスや機能は自社開発にこだわらず、業務提携を通じて他社製品と積極的に連携し、顧客のニーズに応えていく」と、統合化した情報系ビジネスアプリケーション基盤に仕立てていく考えだ。「売らなくてはいけない製品を売りますか? それとも売れる製品を売りますか?」。稲葉社長が「Knowledge Suite」の販売を手がける可能性のあるITベンダーに投げかける言葉だ。「Knowledge Suite」は、月間500社以上の顧客からのお問い合わせを継続して得ている。
「僕たちは『売れる製品』で顧客と満足を共有・共感しながら成長したい」と稲葉社長。「日本のクラウド市場は、日本の技術で守る」。稲葉社長だけでなく、同社の社員が掲げるシンボリックな理念だ。そして、日本の安全で安心して利用できるクラウド・テクノロジー「グリッド技術」を通じて将来の世界進出を夢みる。「導入企業の欲を引き出せるクラウド・サービスに育てたい」と、稲葉社長の言葉にも力が入る。
ブランドダイアログは、今年8月、KDDI、エイジアと業務・資本提携した。これを機に、同社製品と連携を希望する大手業務アプリケーションベンダーからの要請が相次いでいるそうだ。ようやく単月で黒字化が見えてきたブランドダイアログ。大手ベンダーとの提携が進み、創業時からの損益分岐点超えもみえてきた。本当の挑戦は、まさにこれからだ。(谷畑良胤)
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