クラウドアプリ界の異端 ブランドダイアログ~その“キセキ”を追う

<クラウドアプリ界の異端 ブランドダイアログ~その“キセキ”を追う>最終章 グループウェアをクラウド基盤にする次世代戦略が進行中!

2011/08/31 20:29

 世界中に眠るコンピュータの遊休能力をグリッド技術でつなぎ合わせて、仮想のスーパーコンピュータをつくりあげる――。こんな大きなビジョンを掲げ、2006年11月に設立されたブランドダイアログは、企業向けグループウェア「GRIDY(グリッディ)グループウェア」を皮切りに営業支援SFA/顧客管理CRM統合ビジネスアプリケーション「Knowledge Suite(ナレッジスイート)」を立ち上げた。稲葉雄一社長が掲げる大きなビジョンを、ブランドダイアログの核となる社員とどのように共有し、どのように業務に生かしているのだろうか。ここまでの連載では、稲葉社長にブランドダイアログの戦略を聞いてきたが、今回は社員の皆さんにこのビジョンがどこまで届いているのかを問うた。

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純国産のグリッド技術を応用した特異なITベンダー
――R&D本部クラウド開発部 静井佳和副部長

 周知の通り、日本のITベンチャーで「ASP事業者」を掲げていたITベンダーには、近年、「クラウド事業者」に名乗り方を変えた企業が多い。しかし、クラウド本来の技術を保有し、開発している日本ITベンダーは、ブランドダイアログしかないと自負している。クラウド技術は、GoogleやAmazon、Salesforce.comなど、外資系が中心とみられがちで、日本のITベンチャーは、残念ながら戦うチャンスをなかなかつくることができていないというのも事実だ。

 われわれが開発を続けているクラウド・テクノロジーは、純国産で、自社のスクラッチ開発で進めている。こうしたITベンダーは国内に数多くあるが、グリッド・テクノロジーとSaaSの親和性を説くITベンダーは、ブランドダイアログ以外にはない。とくに当社のグリッドは、今後企業のインフラに大きな変革をもたらすと自負している。なかでもプライベート・クラウドにおける活用は、今後クラウド産業発展により起きるIT革命で大きく注目されるはずだ。

 過去にグリッド・テクノロジーが注目されたとき、研究開発分野で事業化に失敗した理由の一つには、技術者や評論家が未来を唱えすぎ、現実離れしたビジョンを掲げていたことが挙げられる。ビジネスにおけるグリッド・テクノロジーには、市場でどのように活用されていくべきかという切り口と活用方法の転換が必要であり、SaaS型のサービスが、その活用を大きく変えていくと確信している。

 企業が膨大なストレージを保有し、それは日々増加し続けている。プライベート・クラウドの根底を理解すれば、「企業内のサーバー群の仮想化」にたどり着く。しかし、企業が膨大なサーバーや能力を保有していない限り、その恩恵は享受しにくい。企業内のサーバーなど、閉じた空間のなかで社員が活用するパソコンの「遊休能力」は企業の資産であり、資源だ。そのことを理解したとき、ストレージは限界値に達しているといえる。

 企業内の社員が使うパソコンのHDD利用率は、平均40%以下といわれている。仮に、従業員1000人の企業でパソコンの保有台数が1000台、1台のHDD容量が100GBとすれば、HDDはまだ60%残っているので、全社で60GB×1000台=60TBが使われていない計算になる。その半分を企業のストレージとして活用する、すなわちパソコン1台あたり30GB程度のHDDをつなぎ合わせて「仮想ストレージ・サーバー」として活用すれば、企業内のストレージ能力のほかに30TBを企業内のパソコンから利用できるようになる。同時にCPUの利用も可能だろう。

 当社の「GRIDY」のエンジンといえる独自の技術「プロモーショナルグリッド(登録商標出願中)」は、“見えないテクノロジー”であり、こうした新しいテクノロジーは、世間で受け入れられにくいのも事実だ。だからこそ、われわれは自社のSaaSでこの独自グリッド技術を活用し、実績を積み上げ、グリッドの力を実証しようとしている。
 

R&D本部クラウド開発部の静井佳和副部長(左)とR&D本部SaaS開発部の日下部聡久副部長
 

「Knowledge Suite」はコラボレーションウェアではない
――R&D本部SaaS開発部 日下部聡久副部長

 ブランドダイアログが開発・販売する営業支援SFA/顧客管理CRM「Knowledge Suite」のように、日本企業の組織構造のヒエラルキーに即したグループウェアやSFA、CRMは他社ベンダーの製品にはない。また、企業内情報の重要度に応じてヒエラルキーを構成するビジネスアプリケーションもないだろう。既存のグループウェアのようなコラボレーションウェアは、人に紐づく情報管理の並列共有を行っている。しかし、情報共有のあるべき姿は、「情報は人のものではなく、組織のものである」ということ。当社では、組織に合わせて柔軟に対応できるビジネスアプリケーションを開発している。

 グループウェアは、企業を包括するアプリケーションだ。そのうち営業支援SFAは、営業部門が活用するもの。「Knowledge Suite」は、この考えの下で、企業の組織構造に応じて、マトリクスで必要なビジネスアプリケーションをグループウェア上ですべて連携する情報系アプリケーションのプラットフォームにすることを目指している。

 国内のグループウェア市場は、米国型コラボレーションウェアが主流だ。しかし、並列作業に即しているグループウェアは、組織全体を包括するのには向いていない。「Knowledge Suite」の場合、情報は組織や役職ヒエラルキーに合わせて動的に制御し、必要のない情報を無駄に表示しない。リアルな世界をバーチャル上で表現する統合ビジネスアプリケーションを目指して、日々開発している。

 顧客の声に耳を傾け、毎月バージョンアップを行う。これを繰り返すことで、顧客は常に新しいビジネスアプリケーションを利用できる。グループウェアというプラットフォームに、必要に応じて他社の良質なビジネスアプリケーションを連携させることもでき、活用の枠が広がる。例えば、エイジア社のメール配信システム「WEB CAS」やウイングアークテクノロジーズのBI(ビジネス・インテリジェンス)「Dr.Sum EA」との連携を実現したことで、活用枠を広げる大きな流れをつくることができた。今後も、良質なビジネスアプリケーションとの連携や協業によるサービスの拡大を目指し、企業の情報系プラットフォーム戦略を支援する。

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外部リンク

ブランドダイアログ=http://www.branddialog.co.jp/