視点

ITソリューションの販売に近道はない

2011/08/25 16:41

週刊BCN 2011年08月22日vol.1395掲載

 私が以前勤務したIT企業で中小企業のIT利活用を推進していた頃から、もう10年が経とうとしている。ITを活用した経営革新を行うことで、売り上げの拡大と業務の効率化を促進しようとしてきたが、どこまで浸透したかについては確信がもてない状況だった。

 現在の会社では、ソーラーシステムの販売事業者に対してシステムの提案・業務支援サービス「ソーラーマスター」をクラウドサービスで提供している。その業務の一環として、実際に中小企業に訪問して、提案をしてみると、いろいろな「気づき」がある。まず、提案は、経営者が直感的に売り上げにつながる、もしくは直接的に経費やリスクが削減できると判断できるようなソリューションであることが前提となる。今こなしている業務をITシステムに置き換えるだけの提案では、現状の人件費で業務が回っているわけだから、先送りされるケースが多くなる。その業種・業界や業務に精通して、将来の方向性や事業リスク等を理解したうえで、提案するITサービスが課題解決に必須となることを説明することが大切だ。コスト面では、毎月の課金スキームを提供するモデルで、付加価値に比べて安価な印象を与えることができる。人件費・広告費などの経費と比較ができれば、なお効果的である。

 また、取引先や銀行、信販会社、業界団体、同業の知り合いからの紹介があれば、コンタクト率と導入率が格段に向上する。かつてITを導入したものの社員が使いこなせなかったという苦い経験があったり、ITを導入してもうまく活用できるかどうか判断できない企業が、他社から評判が伝わって紹介を受けた場合には、契約のハードルが極端に低くなる。決定権限をもっている経営トップと実際に業務で使用する担当者の両方の納得を得られれば、導入は確実となる。導入後は、業務担当者に対するトレーニングとサポート、機能の要望事項をバージョンアップに合わせて組み入れることを怠らないこと、また定期的に経営者に連絡を入れて満足度を確認することで、次の売り上げに繋げることができる。

 自分自身が直接顧客と会い、人脈を形成しながらニーズやIT活用の実態を把握し、開発プラットフォームやサービス内容、価格戦略や営業戦略を設定する──私は今、この活動に手応えを感じている。そして大きく捉えれば、それが中小企業のIT利活用推進の近道であると確信している。
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