視点

ITはリアルなコミュニケーションがカギに

2011/08/18 16:41

週刊BCN 2011年08月08日vol.1394掲載

 IT技術の進化スピードは凄まじい。10年前には想像だにできなかったことが、今、ITで実現している。この先10年は、クラウドコンピューティングを軸にIT業界が回っていくことが予想される。米マイクロソフトが2010年のITの姿を予測して映像化している。「Microsoft Future Vision」がそれだ。アラビア語圏と英語圏の子ども同士が学校の教室で透明な壁越しに会話を交わし、授業内容は同時翻訳しながら学習するシーンなどが登場する。一見すると、非現実的でSF映画を観ている感覚に陥る。だが、一つみえてきたことは、リアルな世界での「コミュニケーション」の重要性だ。

 この映像には、自分のデスクで仕事をこなしたり、会議室で議論するシーンに、現在はまだ存在しない端末やツールが出てくる。マイクロソフトによれば、ここに登場するIT技術は、すでに基礎はできあがっており、応用への速度を高めれば、2010年に実現可能としている。すでに実用化されているテーブル型パソコン「Surface」は、その基礎技術の一端である。マイクロソフトは、こうした新しい技術で人と人が交流することを「ユニファイドコミュニケーション」と呼んでいる。同社が訴えたいことは、「リアルなコミュニケーションを深めるためにITを進化させる」ということだと推察される。

 今、クラウドとともにソーシャルネットワークがビジネス領域でも使われはじめている。そこで、これから会う初対面の人の素性を知ったり、ソーシャル内でバーチャルに会話することができる。事前の交流で実際に面会する時には、より短時間でより深い内容を話すことが可能になるのだ。

 調査会社のIDC Japanによれば、国内IT産業は、2013年までの年平均成長率(CAGR)が1%程度という。世界のサーバーが置かれている場所は、すでに半数がデータセンター(DC)内だ。サーバーの“売り先”は企業内ではなくDCに移った。パソコンもスマートフォンなどに代わりつつある。ソフトウェアはパソコン用にライセンス販売する時代が去って、クラウドによって従量課金制で提供するようになる。

 近い将来、IT機器の販売会社は、従来の売り方ができなくなるかもしれない。生産性向上やコスト削減策を提案するだけではなく、リアルなコミュニケーションを補助する商材を提供することが、次世代の収益を確保するうえでのヒントになる。
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