IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>37.協和デンタル・ラボラトリー(上) 手作業の工程管理に限界

2011/07/21 16:04

週刊BCN 2011年07月18日vol.1391掲載

 千葉県松戸市の協和デンタル・ラボラトリー(木村健二社長)は、差し歯や入れ歯などの歯科技工物を受注製作している。とくに、チタン製人工歯根であるインプラントの上部に取り付ける人工歯の製作に積極的に取り組んでいる。近年は、新素材であるジルコニア・セラミックスの人工歯の国内でのパイオニアとして、事業を拡大。他社に先駆けて、ジルコニア・セラミックスの人工歯製作用のCAD/CAMシステムを導入している。その同社は、ITコーディネータである鬼澤健八氏の支援を得て、工程計画システムを導入し、製作工程の標準化や見える化を成し遂げた。

 同社は、インプラントやジルコニア・セラミックスなどの新分野を開拓することで受注件数を大幅に増やし、それとともに社員も大量に採用した。製法や部品の種類が多く、歯科医師の製作指示もさまざまで、工程管理は複雑化する一方だった。しかし、工程管理の効率化は進んでおらず、歯科技工士の経験や勘に頼る対応が続いていた。工程ごとに設けられたチームによっては、壁掛けカレンダーに最終発送日を記載するだけだったため、前後工程のチームの進行状況を把握することが困難だった。その結果、残業で受注分の作業をこなす状況が続いていた。木村社長は、「人海戦術で対応していた」と振り返る。

 同社が陥っていた状況は、歯科技工業界では珍しいものではない。この業界は小規模経営の事業者が多く、保守的。労働時間が長いうえに、残業手当は支給されないことが業界の常識となっている。こうした常識が支配しており、ITによる工程管理が遅れている実状がある。木村社長は、「経営者の勝手な理屈で、労働環境が軽視されている」と自戒を込めて指摘する。同社は、新たに工程計画システムを導入するまでに、数年前から労働環境の改善に取り組んでいた。

 工程計画のシステム化に取り組み始めたのは2008年のことだった。歯科技工士である上鵜瀬美奈氏が、千葉県の「サービス産業生産性向上モデル事業」に応募し、補助金事業に採択された。上鵜瀬氏は工程計画プロジェクトのリーダーとして活躍したが、ITに詳しい人材が社内におらず、期限までに完遂できそうになかったため、補助金の辞退を千葉県に申し出ることになった──。(つづく)(信澤健太)

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