震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ

<震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ>第7回 クライアント編

2011/07/21 16:04

週刊BCN 2011年07月18日vol.1391掲載

 電力事情の悪化は、定時に規則正しく出社して、終業時刻まで仕事をこなす従来のワークスタイルを一変させるインパクトがある。計画停電で通勤の足が絶たれるまではいかなくとも、例えば、節電目的で導入されたサマータイム制や輪番休業は、取引先との共同作業やサプライチェーンに少なからぬ乱れを与えているからだ。

ワークスタイルの変革期が到来
ユニファイドアクセスで柔軟性高める

 過去にも、インフルエンザをはじめとするパンデミック対策で、ワークスタイルを変えるきっかけはあった。仮想デスクトップなどの仕組みが考案され、会社でしか仕事ができない固定的な環境は、少なくとも技術的には変革することができた。しかし、パンデミックによる影響が限定的だったこともあり、「仮想環境を本格導入する気運は生じなかった」(大手SIer幹部)という経緯がある。しかし、今回は違う。ワークスタイルを硬直化させる古いクライアント/サーバー方式からの脱却が強く求められ、世界のどこからでもセキュアに社内システムや自分のデスクトップPCにアクセスするかたちの事業継続計画(BCP)への意識が高まっている。

 NTTデータは、総合クラウドサービス「BizXaaS(ビズエクサース)」のフロントエンド系メニュー「BizXaaS Office」で、リモートアクセスやユニファイドアクセスの提案を強化している(図参照)。今年は、Windows XPからWindows 7への乗り換えの時期とも重なるため、このタイミングでニーズが拡大しているBCP対応のフロントシステムへの移行が期待されている。NTTデータ自身も、今夏、実行中の前年同期比15%の節電で、自社商材の「BizXaaS Office」を活用したユニファイドアクセスなどの節電策に乗り出した。オフィスフロアの計画的閉鎖も視野に入れているためで、すでに関係するスタッフ約1万人分のPCを持ち運びできるノートPCに切り替えた。

 また、事業継続の観点から、中国やマレーシアなど国境を越えた開発環境の整備にも乗り出している。中国・ASEANの複数の開発拠点とのネットワーク回線を増強したり、現地のデータセンター(DC)を整備して、一部システムを海外拠点のDCへ移す施策を続行中だ。NTTデータの遠藤宏・執行役員基盤システム事業本部長は、一連の施策によって「節電と事業継続の両方を達成できる」と、手応えを感じている。自ら実績を示すことで、顧客企業に向けた「BizXaaS」活用型対策ビジネスの拡大に力を入れる考えだ。(安藤章司)

  • 1

関連記事

<震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ>第4回 オフィスと家庭の節電編(上)

<震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ>第5回 オフィスと家庭の節電編(中)

<震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ>第6回 オフィスと家庭の節電編(下)

震災後、ニーズ高まるモバイルクラウド