視点
市場調査データの見方についての一考察
2011/07/07 16:41
週刊BCN 2011年07月04日vol.1389掲載
企業が国内の新規市場を検討するときには、市場の将来性を判断して、参入の是非を決定する。時間をかけて検討し、参入リスクを極力減らしたいと考えるのは当然であるが、迅速な参入が事業の成功に結びつくケースもよくある。国内クラウド市場なども先行者利益が期待される市場である。
企業は検討時間の短縮、判定精度の向上のために市場調査会社の情報を利用する。この場合にまず注意を要する点は、それが本当に入手したい情報なのか、ということである。新規市場では、市場そのものの定義が固まっていない場合が多く、調査会社が独自に定義づけをするので、同じ名前の市場売り上げデータでも、調査元によって異なる。情報を利用する場合は、まず市場の定義について、調査元に正確な説明を求める必要がある。
二番目の注意点は、情報の収集方法である。アナリスト業務では情報収集方法の決定と情報提供者の選定が最も難しい部分である。質問の設定、面談者の選定、アンケート依頼先の選別、回答件数によって、情報の質がまったく変わってしまうことを念頭に置いておきたい。調査の目的と結果のアウトプット項目を明確にしてこれらを選定するのだが、往々にしてコストの問題が絡んでくるので、ある程度の満足度で調整することになる。情報収集方法についても、調査元に問い合わせれば回答は得られる。それを情報の質の良否と関連づけるのは難しいが、比較対象があれば優位性の判断はできる。
最後に市場予測の見方である。本音をいえば、新規市場については2~3年後の予測はまず立てようがない。現状の数か月単位の市場成長率と関連業界の動向をベースに、1年後の予測が可能な程度である。予測は参考情報として考えればよいだろう。
市場を予測するためには過去のデータと事象の記録が不可欠であり、市場ライフサイクルで安定成長期に入り、過去情報の蓄積ができれば精度の高い予測が可能になる。もし信憑性が少しでも高い予測を得たい場合には、担当しているアナリストの人物像を知ることが肝心だ。アナリストの経験年数、担当業界、実績などによって判断できる。
なお、予測手法は機密事項で、問い合わせてもまず回答は得られない。
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