IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>35.メトロール(上) 訴訟寸前の大失敗でソフトベンダーに不信感

2011/07/07 16:04

週刊BCN 2011年07月04日vol.1389掲載

 東京都立川市のメトロール(松橋卓司社長)は、接触式、精密位置決め用工業スイッチで世界トップシェアを誇る。自動車業界や工作機業界のほか、半導体製造装置、ロボット、印刷機械、ディスクブレーキなど、各業界のメーカーに採用されているベストセラーの製品だ。国内のみならず、世界64か国で販売している。

 同社は、エクスの製造業向けERP(統合基幹業務システム)「Factory-ONE 電脳工場」を一部カスタマイズして導入した。営業から設計・製造・出荷までの各業務で、技術情報を共有して統合管理を実現。経営管理・品質分析のための資料の提供や経理との連携を可能にした。仕掛り在庫の把握や資金繰り、事務作業の軽減にも一役買っている。

 導入後、ほとんどトラブルは発生せずに運用できている。ただ、それ以前にメトロールは独自システムの開発にこだわり、失敗を重ねてきたため、ベンダーに大きな不信感を抱いていた。

 2008年から09年にかけて新たな業務管理システムを構築したが、これが訴訟寸前にまで発展する大失敗となった。松橋社長は、「納期遅れで本格稼働まで2年ほどかかったあげく、動作スピードが遅くて使いものにならないシロモノだった。結局、検収が終了しなかった」と振り返る。

 失敗を繰り返さないために、多摩地域の活動で面識のあったITマネジメント・サポート協同組合(ITMS)の高島利尚理事長を頼った。そこで候補に挙がったのは、ITMSのメンバーで、製造業の事例を豊富にもつ松浦薫・ITコーディネータ(ITC)だった。

 松浦ITCは、事業の拡大に対応できるシステムの基礎事項やベンダーの見積もり段階での能力判定、変化が激しいIT環境を踏まえたシステム構築などについてアドバイスした。

 まずは勉強会を実施し、社内で問題点の洗い出しを進めた。当時は、製造業の基本となる部品表を構築できていないほか、業務ごとに導入していたベンダーの個別システム間の連携がとれていなかった。松橋社長は、「直販ウェブシステムと営業管理、製造管理の各システムはデータベースにつながりがなく、大きな問題となっていた」と語る。(つづく)(信澤健太)

職場ではほとんど仕切りを設けていない
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