震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ

<震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ>第5回 オフィスと家庭の節電編(中)

2011/07/07 16:04

週刊BCN 2011年07月04日vol.1389掲載

 いよいよ夏本番を迎えた。空調機器の稼働率が高まる状況下で、首都圏・東日本、中部、関西…、続々と電力事情の悪化が伝えられる。中長期的な電力供給不足を見越した有力ITベンダーは、センシング技術を駆使した省エネ策を打ち出している。

無線で省エネに挑戦
インターネット オブ シングスを適用

ユビキタス
佐野勝大執行役員
 組み込みソフトを得意とするユビキタスは、無線LAN(Wi-Fi)機能を内蔵した超小型モジュールを試作。半導体メーカーと協業したもので、ユビキタスは組み込み型Wi-Fiシステムを実装した。“無線”と“節電”は、一見すると無関係のようにみえるが、実は密接な関わりがある。テレビや冷蔵庫、洗濯機などの機器ごとの電力消費量は、現時点では容易に測定できない。これらの機器に無線モジュールを組み込み、機器の稼働状況をネットワークに送ることができれば、より詳しい電力消費量を目に見えるかたちでリアルタイムに示せる。有線よりも扱いやすいことから、省エネ測定に無線を活用する動きが活発化している。

 ユビキタスでは、最終的には家電やAV機器に無線モジュールを組み込むことを念頭に置くものの、まず手始めとして電源タップにWi-Fiを組み込んだ「iRemoTap(アイリモタップ)」を試作した。タップのソケットごとのデータをインターネット上で可視化、分析することができ、電源の開閉も行える優れものだ。同社の佐野勝大執行役員は、「iPhoneやiPad、Androidのスマートデバイスの普及で、家庭やオフィスでの無線LAN使用率は格段に高まっている」ことから、Wi-Fi方式を採用した。

 インターネットに接続する考え方は、「インターネット オブ シングス(Internet of Things)」に基づくもの。すべての機器をネットにつなげる概念は、日本でも馴染みがある「M2M(マシン・トゥ・マシン)」や「ユビキタスネットワーク」に通じる。また、無線で機器同士を接続する方式は「ZigBee(ジグビー)」などが有名で、この方式は近距離無線の「Bluetooth」に比べて通信速度は遅いものの、電力消費が格段に小さい。Wi-FiはZigBeeよりも高規格だが、普及率が高く、インターネットとの親和性が高い特性がある。

 ユビキタスは、超小型無線LANモジュールをメーカーと組んで各種機器に組み込み、量産効果でコストを抑え、より一層の小型化、省電力製品の開発を進める。ネット上に集まった機器の測定データを分析し、「省エネなどに役立てる」(ユビキタスの三原寛司社長)という将来構想を練る。(安藤章司)

ユビキタスが試作した無線LANモジュール内蔵の電源タップ「iRemoTap」
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