視点

エネルギーの転換期、そして未来の姿

2011/06/16 16:41

週刊BCN 2011年06月13日vol.1386掲載

 東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故は、日本のみならず世界主要国でのエネルギー政策に影響を及ぼした。環境エネルギーにおける大きな転換期となることは間違いないだろう。

 現在研究されている技術が発展していけば、30~40年後はどのような世界になっているのだろうか。その姿を想像してみよう。


 「GENESIS計画」が具体的にスタートし、世界各地の砂漠で大規模な太陽光・太陽熱発電所が設置された。これによって全世界の電力消費をほぼ賄い、PPLPソリッドDC海底ケーブルなどによって地球電力ネットワークが構築され、送電できるようになった。災害時には電力を世界各地から調達することができるようになり、データセンターは、高温直流超電導送電によってほとんど送電ロスなしに直接供給される。国内でも、スマートグリッドによって送電網のインテリジェント化が図られるとともに、電力の自由化が進み、夜はサハラ砂漠の太陽光発電所で発電した電力をインターネットで購入できるようになった。

 各家庭に設置されている太陽光発電装置には、ナノ技術によって発電効率が50%を超える軽量高性能モジュールが装備され、30坪の家屋でも年間1万2500kWhを発電し、その家の電力消費をすべて賄うことができている。もちろん、余剰電力は住宅用蓄電池や電気自動車に充電し、夜間の電力消費などに備える。HEMS(Home Energy Management System)で電力供給・消費のすべてをコントロールして、最適なエコライフを実現している。

 また、資源に限界のあるリチウムイオン電池から、ナトリウムイオン2次電池が実用化された。安価で小型・高性能となったので、不安定だった再生可能エネルギーが安定的に供給され、ソーラー付きの電気自動車も1回の充電で1000Kmの走行が可能となった。ガソリン自動車とガソリンスタンドは町から姿を消し、騒音とガソリンのにおいが懐かしくも思える──。

 環境エネルギー分野においてここに記した未来像は十分に実現可能であり、最先端の技術をもっている日本は、主導して地球にやさしく安心・安全な世界を創造すべきである。
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