視点

震災後、ニーズ高まるモバイルクラウド

2011/05/19 16:41

週刊BCN 2011年05月16日vol.1382掲載

 東日本大震災で被災された方々、またそのご家族、関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。震災直後には、あまりのインパクトの大きさに、しばらくなすすべもなかったが、2か月が経過した段階でようやく整備すべき事柄がみえてきたように思う。甚大な規模の被害と余震の断続、加えて首都圏では計画停電と称する電力遮断があり、データやサーバー資産を手元に置くこと自体がリスクとなる恐れが露呈した。さらには、震災に伴う被災者の安否情報や物資情報、自治体ホームページ、寄付金受付サイトなどの情報発信基盤を中心に、負荷分散や損失した情報発信インフラの代替手段としてクラウドの活用が加速したともいえる。

 固定通信回線が破断し、震災が起きてから長期間にわたってネットワークが繋がらない状態が続いている。携帯電話やスマートフォンでの通話は接続が制限され、基地局がダメージを受けた。だが、被災の現地では、固定電話よりはまだつながりやすいモバイルネットワークが重要な通信インフラとして貢献したという事実がある。それだけでなく、地震発生直後にはモバイル端末からツイッターやFacebookを経由して安否確認ができた例も数多いと聞いている。また、避難所で生活せざるを得ない人たちにとっては、モバイルでのデータ通信の利用はもちろん、新たにサーバーを購入せずにクラウドサービスをモバイルで活用しながら最低限の事業を継続することも可能になるわけだ。ただし、簡単に使えるクラウドサービスばかりではないので、そこは整備すべき課題も依然として残しているといえよう。

 首都圏においても、電力供給が不足し、いつ停電が起こるか分からないとか、自宅待機を余儀なくされる事態が発生した。そして、首都圏や東海エリアでも大地震が起こる可能性が指摘されている。このような大規模災害の際には、個人はもちろん、法人においてもモバイルでのリモートアクセス環境と、クラウドサービスを組み合わせたビジネス環境、すなわちモバイルクラウドが重要なBCP(事業継続計画)として整備すべき必須事項になる。

 このようなモバイルクラウドの活用により、平時における利便性の高い環境の整備はもちろんのこと、災害発生時にも安定的にビジネスが継続できる環境を整備することが急務である。日本のビジネスが一刻も早く競争力を回復する日が来るために、必ずやIT業界が貢献できると信じている。
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