視点
クラウド普及下におけるフリーミアムの効用
2011/05/05 16:41
週刊BCN 2011年05月02日vol.1381掲載
ロングテールもフリービジネスも、オンラインサービスに特化されるマーケティング理論である。クラウドコンピューティングによるサービス提供が急速に拡大する未来では、現状の流通形態を基盤とするマーケティング手法は意味をなさなくなる。アンダーソンが唱えるものが一般的なマーケティング理論となり、さらに新しいマーケティング手法が提案されていく。
『フリー』から引用すると、無償の製品・サービスの提供形態は4種類に分類される。そのなかでフリーミアムは、「有償サービスの購入者(プレミアムユーザー)が無償版のサービス費用を負担する場合」と規定されている。具体的にはSkypeの普及によって理解されている仕組みである。
フリーミアムの提供者側の利点は、多くの無償版ユーザーからの情報収集によって製品・サービスの品質向上を図ることができることにある。また、フリーミアム製品が普及するには、一定水準以上の利用効果が認められる機能をもつ必要がある。例えばSkypeであれば、インターネット上の通話は無償で、簡単な社内会議などには十分利用できる、といったことだ。フリーミアムはクラウドを前提とするものではないが、無償・有償のサービス提供、蓄積情報の利用、SaaSとしてのサービス料金の決済などを考えると、クラウドの普及につれて、ソフトウェア販売モデルの主流になる可能性が高い。
このような状況を突き進めて考えてゆくと、とくに広範囲のユーザーが利用するアプリケーションでは、専門性が高い技術的な製品以外はすべて無償で(ある程度の機能制限があっても)クラウドサービスが利用できる環境になってゆくと考えられる。現状でも、メール、掲示板、スケジュール管理、データアーカイブなどはすでに無償で利用できており、将来は小規模企業では無償でビジネスシステムの基盤が整備できるようになってゆくであろう。クラウドコンピューティングの一つの側面からみた大きな波及効果である。
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