視点

震災が生み出す“新しい絆”に期待を寄せる

2011/04/28 16:41

週刊BCN 2011年04月25日vol.1380掲載

 東日本大震災には、人間の無力さと無知を否応なしに思い知らされた。しかもまだ余震が頻発する日々が続き、東日本の人々は心理的に不安がぬぐえず、生活の不便さに困惑しておられる。千年に一度の自然の振る舞いには、耐えるしかないのだろうか。

 岐阜にあるソフトピアもそうだが、西日本ではそのような被害に遭うこともなく、人々はいつものように普段の生活を営みながら、そのことがいかに幸福であり、価値ある日常であるかを実感している。が、同時に、何もしないでよいのか、という思いにも駆られている。

 岐阜県とソフトピアは、震災後すぐに東日本で被害を受けたベンチャー企業の避難場所を半年間無償で提供すると発表した。以前からいろいろなイベントなどで多くのベンチャー企業と密接な関係をもっていたことで、ソフトピアがネットワークの情報環境に優れたエリアであることを熟知している皆さんから、すぐに問い合わせが来た。明日にでも開発部隊をソフトピアに移動して、普段どおりの作業環境を構築したい、という悲鳴に近い要望が数多く寄せられた。そして事実、いくつかの企業がまさに着の身着のままの状態で避難してこられた。

 となれば、ソフトピアが成すべきことは、ネットワーク環境にはなんの問題もないので、机と椅子を確保さえすればよく、建物の中に余っている備品をかき集めて、それをまずは利用してもらった。とはいえ公的機関だから、普段ならば面倒な書類の事前提出とか入居審査という手続きが不可欠なのだが、今回ばかりは緊急事態への柔軟な対応を優先させ、まずは安心と安全の環境で作業の迅速な再開を可能にするように、まさにホスピタリティを重視した対応を行った。これが東日本の皆さんへのささやかな貢献であると思う。

 何事もスピードが命。事態の緊急性を前面に打ち出して、いかに俊敏な意思決定をするか、それを実行する柔軟な体制をいかに的確に築くかが肝心だ。半年後、この対応がどのような新しい事態をもたらすか、楽しみである。地震を契機に参集したベンチャーたちが、この地で新しい繋がりのプロジェクトを立ち上げたりしたら、リスク分散という弱気な理由ではなく、ソフトピアだからこそ新しいチャレンジが生まれるという評価となって、より豊かな絆が生まれるかもしれない。そんな夢の実現を密かに期待している。
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