視点

IT業界から政府へ震災復興策の提言を

2011/04/14 16:41

週刊BCN 2011年04月11日vol.1378掲載

 東日本大震災と原発事故という未曽有の災厄の下で、戦後最大の危機克服に向けて国を挙げた復興の努力が求められている。政府は、「エコタウン建設」の推進などを含めた検討を行う有識者らの「復興構想会議」を立ち上げて、復旧・復興に向けた包括的な戦略を練るという。この国家的な長期計画策定にあたって、IT業界が活躍できる場は無数にある。新しい都市づくりや代替エネルギー、省エネなどの政策策定では、「スマートグリッド」などを応用した復旧・復興策を、IT業界としても早期に提言をまとめるべきだ。

 復旧・復興の順番としては、まず東北地方、とくに三陸海岸の沿岸部を再生することを優先すべきだ。第一次世界大戦で焼失した欧州の街並みは、破壊された戦前の面影を残そうと、以前の建物を再現したとされる。東北沿岸部の再生に向けては、都市を高台に再興する案が出ているようだが、私としては風光明媚な以前の街並みを再現してほしい。大津波に襲われた歴史をみると、簡単ではないことは理解できる。だが、少なくとも沿岸部の企業復興は早急に必要だ。その際、従来型の企業内にシステムを置く形は望ましくないだろう。クラウドなどを活用して、事業継続に向けた備えを万全にしたシステム提案を行わなければならない。

 次に、計画停電などへの備えだ。日本の基幹産業である製造業の操業を止めるわけにはいかない。限られた電力量のなかでは、個々の企業が省エネを心がけたり、政府による総量規制も重要だ。だが、長期的な視点では、恒常的に電力消費を減らす仕組みが求められる。IT業界では、「グリーンIT」の名の下に機器類の低消費電力化を推進してきた。最近では、「スマートグリッド」や「スマートシティ」として、社会インフラをITなどの最新技術を駆使し、エネルギー効率を高めて省電力化を図る動きが活発化している。

 すでに、日本のこれらの技術は中国などへ輸出され、次のIT需要を担う期待が高まっている。これを国家レベルで早期に軌道に乗せるべきだ。中・長期的には、原発の代替エネルギーが必要になる。大震災を機に反原発の世論は高まり、この手の議論が浮かびあがってくる。原発依存度は約50%。津波対策などを万全に施しつつ、徐々に別エネルギーを増大させていくことが求められる。ここでもITの出番は多い。IT業界が率先して国に提案をし、早期に実行できれば、国内IT産業がグローバルに展開する道にもつながっていく。
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