IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>20.富士金属(下) カンバン方式を参考に、IT化を推進

2011/03/17 16:04

週刊BCN 2011年03月14日vol.1374掲載

 「2007年は当社にとってのIT元年だった」。こう話すのは、富士金属(高橋鉄重代表取締役)のCIO的な立場でIT改革を推進した高橋達三・取締役専務だ。鋳造計画・実績管理に取り組み、「ムダのない生産管理を目指した」という。

 2008年時点で、トヨタ自動車が世界販売台数1位になったことが、IT化推進の一つの大きなきっかけとなった。高橋専務は「トヨタが世界一になってオーバーワークになった。もし生産管理をきちんとやっていなかったら、過剰在庫で潰れていたはず」と振り返る。

 同社は、水口和美・ITコーディネータ(ITC)の支援を受けながらPCの導入などのIT化を進めた。現場で中心となったのは、伊藤孝・執行役員製造部長だ。現場のグループリーダーの意見を取り入れながらプロジェクトに着手した。

 表計算ソフトを利用していた手作業による生産管理は、新システムを導入して各業務を改善することで、受注予測から納品までの一貫した業務プロセスを標準化することができた。生産実績のリアルタイム報告や出荷検品の精度向上、QRコードによる棚卸し、外注受け払い業務にはハンディターミナルを活用した。

 同社のシステム構築を支援したデュプロ販売の田中伸一・システム事業部ゼネラルソリューション営業部グループリーダーは、工夫によって得られた効果として、(1)工程の完成報告とリアルタイムな在庫計上、(2)計画変更に対する柔軟性の二つを挙げる。

 ハンディターミナルの操作を容易にするために、作業が完了した際にカンバンのバーコードを読み取り、完成数を入力するだけの操作とした。これで作業者の負担を軽減することができた。また、生産計画にもとづく生産指示書と現品票の機能を併せ持つF(富士金属)カンバンを発行し、それに基づいて生産するようにした。機械ごとに用意した差し立て板(Fカンバンを入れておく棚)に、現場のリーダーがFカンバンを差し立てていくという方法で、計画変更に対する柔軟性を確保した。

 一連のIT改革で、製造のリードタイムを40%短縮し、納入遅れの回数やミスが減ったという。水口ITCは「Tier 3(3次下請け)の場合、自ら改革に乗り出すことが少ない。富士金属はスタッフに恵まれた」と評する。(信澤健太)

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