定石を再考する~調査データの裏に見えるSMBの実態~

<定石を再考する~調査データの裏に見えるSMBの実態~>第9回 国内大手ITベンダの中堅・中小向けグループ企業再編をユーザーや販社・SIerはどう見ているか

2011/02/15 20:29


 そこで、今度は同じく中堅・中小のIT企業(※)に国内大手ベンダーのグループ企業再編についてたずねた結果を考察する。

※以下の3業態に分けてアンケートを実施

 業態1:直販型ISV、二次販社、SIer
 業態2:間接販売型ISV
 業態3:一次販社、IT機器卸売業
 ここでは上記3形態すべてを合わせた結果を掲載している

 図4は、中堅・中小のIT企業に対して、「国内大手ベンダーの中堅・中小向けグループ企業再編が自社にもたらすメリット」をたずねた結果である。

図4 国内大手ベンダーの中堅・中小向けグループ企業再編が自社にもたらすメリット(三つまで)

 「自社が持たない機能の補完」「新たな商談紹介」「自社の製品/サービスの拡販」「相手の商材/サービスの自社による再販」といったように、ビジネスの具体的な商材や商談のやりとりを期待している状況がうかがえる。その一方で、「販売時の支援/サポート」「運用/保守時の支援サポート」「契約条件の緩和」などの間接的な支援のニーズは低いことがわかる。同様の観点でデメリットをたずねたものが以下のグラフだ。

図5 国内大手ベンダーの中堅・中小向けグループ企業再編が自社にもたらすデメリット(三つまで)

「自社にとっての競合が増える」「自社と重複/競合する商材がある」といったように、警戒心を抱いている様子がうかがえる回答が目立つ。また、「従来の大手ベンダーとの取引関係が変わってしまう」も24.9%と低くない点に注意が必要だ。これまで大手ベンダーと直接取引をしていた中堅SIerにとっては、製品/サービスがグループ企業に移管されることで取引関係が変わってしまう影響は少なくない。

 国内大手ベンダーの中堅・中小向けグループ企業としては、既存の販社/SIerと競合関係に陥るのを避け、既存の販社/SIerのビジネスを補完する方向で協力体制を築くことが最善の策であるといえる。そうすれば、中堅・中小企業がこれまでなしえなかった「自社の業態/業務をきちんと反映したうえでのIT活用における全体最適」が実現する可能性もでてくる。

 こうした取り組みは、国内の中堅・中小企業が海外へと展開していく際に極めて重要な要素となってくる。国内市場の先細りが懸念されるなか、中堅・中小ユーザー企業とIT企業の双方が新たな市場へと踏み出すためには、既存の販社/SIerと大手ベンダーの中堅・中小向けグループ企業との協力体制が欠かせない。

 大手ベンダによる中堅・中小向けグループ企業再編を。既存の販社/SIerにとっての対立軸と見なすのではなく、協力体制の構築へ向けた分岐点と捉えることが、今後の中堅・中小のIT市場にとって極めて重要ではないかと考えている。

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ノークリサーチ シニアアナリスト 岩上由高

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