視点
消費者物価指数と年金
2011/02/10 16:41
週刊BCN 2011年02月07日vol.1369掲載
公的年金額の引き下げとあわせて、「年金の支給開始年齢を引き上げることの検討を開始」というショッキングなニュースも飛び込んできた。年金制度は現役世代の納めた保険料で、高齢者の年金を支える仕組みである。人口減少が続き、加入者数が減れば、その分、年金財政は悪化する。1年間の年金の支払額は、09年度に初めて50兆円を突破した。厚生労働省の推計によると、15年には59兆円と約2割増え、25年度には65兆円まで膨らむ見通しだ。65歳以上の高齢者一人に対する生産年齢人口(15~64歳)は、09年の2.8人から15年には2.3人に低下する見込みで、最悪の場合、現役一人で高齢者一人を支えるという形になることも予想される。早急に対策をとらなければ制度の維持も難しくなってきている。支給開始年齢は、1994年と2000年の2回の年金制度の改正で、それまで、サラリーマンに60歳から支給されていた厚生年金の支給開始年齢を、男子で昭和36年4月2日以後に生まれた人、女子で昭和41年4月2日以後に生まれた人には、65歳から支給するという改正を行った。アメリカなどの先進諸外国は、支給開始年齢を67歳とする国が多くなってきている。
公的年金制度は、企業経営にも重大な影響を及ぼす。会社負担の社会保険料の増加は、労務コストのアップとなる。将来的には、年金の支給開始年齢の引き上げは避けて通れない状況にある。企業経営という観点からは、定年年齢の引き上げも含めて考えていかなければならない。「政治の道具にされてきた年金制度をどうするのか?」。私たちは真剣に考えなければならない岐路に立たされている。
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