視点

中小企業の支援は“御用聞き”の感覚で

2010/12/22 16:41

週刊BCN 2010年12月20日vol.1363掲載

 つくづく「継続は力なり」だと思う。昔から苦節10年というが、耐えて、頑張って一日でも長く事業を続けていれば、きっといいことがある。これまでいろいろなベンチャー企業の浮き沈みを身近でみてきたが、継続がいかに難しいかを実感したし、だからこそ継続すればなんとかなる、という小さな果実も数多くみてきた。

 身内の話だが、岐阜県の財団法人ソフトピアジャパンも1996年に発足して、すでに15年目に入っている。今もって試行錯誤の繰り返しであるが、ここ10年は地元の中小・零細企業のIT化に何で貢献できるか、という一点について迷うことはなかった。そこでの事業支援のなかで、一番の目玉は経済産業省と岐阜県から委託された「IT経営応援隊」事業で、すでに6年目を迎えている。この事業への需要は年々増すばかりで、年間で100社程度の支援実績がある。相談件数が増加し、企業のITニーズも時代の移り変わりや地域企業の成長に合わせて高度化・複雑化しているので、自前のスタッフがきめ細かなアドバイスをするだけでなく、ITコーディネータをも活用してもらい、少しでも成果が出るような経営支援を行っている。最近は「ネット通販」などで販売チャネルの変更や新規事業を展開するためのITニーズや、「脱下請け」を目的とした製造業の自社製品開発とそれの直販・バイヤー開拓に関するITニーズなどが急増したので、これらに対応して、長期的な展望をもとに、一定の成果が出るように経営者と二人三脚で課題解決に当たっている。

 企業支援は、すべてに時間がかかる。資金やノウハウを提供すれば、すぐに成果が現れる事業など、あるわけがない。にもかかわらず、最近の公的支援は短期的な視野でしか物事をみようとしない。公的支援をする側に必要とされるのは、気長できめ細やかなつき合いであり、経営者や現場の職人たちと一緒になって何か新しい知恵を絞り出す努力である。それには、毎日のように現場に御用聞きに出かける覚悟が求められる。

 地方の活性化に必要とされるのは、既存の多くの中小・零細企業の経営にITをいかに有効に活用させるか、そこでいかに個別具体的な支援をするか、に尽きる。企業の根幹を底上げして、経営基盤を大幅に改善しないかぎり、地域の再生も活性化もあり得ない。それには、長いつき合いと知恵とIT支援が最大の有効手段となる。これこそわれわれが胆に銘じるべきことである。
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