視点

人事労務の世界にもクラウドがやってきた

2010/12/09 16:41

週刊BCN 2010年12月06日vol.1361掲載

 クラウドコンピューティングの時代といわれている。私は社会保険労務士なので、この分野にはまったく知識がないことを前提としてお読みいただきたいが、昨年から、私の会社にソフト開発会社からアライアンスの声がかかる件数が非常に多くなった。私が主催している社会保険労務士の全国組織が2000事務所を超えたため、この組織の先生方の顧問先中小企業に向けたサービスを展開したいというアライアンスの申し出である。

 給与計算ASP、人事評価システム、勤怠管理ASP、e-ラーニングなど、さまざまな提案を受け、五つほどの業務アプリケーションのアライアンス開発に着手した。そのなかに、非常に面白い、ASPならではのサービスに適した事例があったので紹介したい。

 ある上場企業とのアライアンスで生まれた商品だが、人事・労務関係規定管理のクラウド型である。周知の通り、最近は労務コンプライアンスが非常に重要になってきている。今年4月から労働基準法が改正され、就業規則の変更が必要になった会社や、6月末には改正育児・介護休業法の施行もあったので、会社は法改正にあわせた変更が必要になる。

 私どもの事務所には、経営戦略型就業規則という、商標登録している就業規則のひな型がある。さらには、就業規則に関連する諸届け規定のフォーマットや、関連諸規定も整備している。これらのコンテンツを活用して、人事・労務管理関係の規定の整備と、法改正に適宜対応するという商品が誕生した。ポイントは二つ。一つは、法改正のつど対応できるようなアラート機能をもたせたことだ。就業規則は、労働基準法をはじめとして、多くの法律に根拠をもっている。改正のたびに就業規則や関連諸規定の整備が必要になるわけだが、漏れのない対応を行うために、就業規則の条文に根拠法令を紐づけしてアラートを出す仕組みだ。

 二つ目が、就業規則の周知義務との関係。就業規則は、労働者に周知しなければならないことになっている。いつでもデータセンターから就業規則が閲覧できる状態になれば、周知義務の問題も発生しない。また、この文書管理のASPは、編集が容易で、改定履歴や新旧対照表なども自動的に生成できる。これがクラウドといえるのかどうかは不明だが、人事・労務の分野にも、新しいタイプの商品がどんどん出てくる時代になったのだということを実感しているところである。
  • 1

関連記事

「クラウド」とは何なのか 今こそ明確な定義を

IT業界は労働法令の改正に注目すべし

企業に負担増強いる法改正、続々と

精神疾患という労務リスク