視点
ITデバイドの解消こそが新市場を創出
2010/11/11 16:41
週刊BCN 2010年11月08日vol.1357掲載
その間、IT業界は拡大分散し、さまざまな業態が確立されてきたが、コンピュータの利用範囲が中小企業や一般消費者へ拡大したことによって顕在化した、IT(デジタル)デバイドの問題が根強く残っている。この問題は騒がれ続けてはいるものの、なぜかきちんと解決されずにいる。
ITデバイドが存在するため、国内のIT投資が、会社の数でいえば0・2%程度しかない1000人以上の大企業に大きく依存し、PCの利便性を必要とする高齢者や、地方在住者になかなか普及しない状況は遅々として改善が進んでいないのが実情である。この問題にはさまざまな側面があるが、一般的なITデバイドの意味として、製品やサービスの利用者のレベルについて考えてみよう。
ここで最も問題視されるべきは、製品・サービスを提供している企業がどこまでITデバイド解消を真剣に考えて活動しているかである。本当にIT知識が十分でない利用者に対してその利点を教え、啓発して知識レベルを引き上げることができるのは、学校の教師ではなく官公庁の担当者でもなく、まさにその製品やサービスを提供する側だと思う。私の感じるところでは、どうもこのような意識が希薄で、PC販売をしている企業では「いまさら…」、システム販売をしている企業では「中小企業相手では効率が悪い」などといった理由で自らの任務を放棄しているようにみえる。
基本的なIT知識のレベルを向上させれば、新規のIT製品やサービスについて利用者に説明することが容易になり、ビジネス展開にも有効であることを認識すべきだろう。国内IT市場は、全般的に買い替え需要の獲得競争を展開するビジネスが主流になって久しい。個人でも企業でも、コスト削減のためにさまざまな手段を用いてPCやサーバー、周辺機器の延命を図っている状況下においては、リタイアメントレートが低下し、買い替え需要自体が減少していく。ここにプラスできる新規需要として、今後は社会活動に参加する高齢者の増加や中小企業のIT新規投資による需要を喚起しなければ、現状は変わっていかないだろう。
ITビジネスに関わっている企業は、今一度、根本からIT市場の拡大を図るために、ITデバイドの解消・縮小による顧客層の拡大を考えるべきと思う。
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