視点

著作権侵害を未然に防ぐ手立てとは

2010/09/16 16:41

週刊BCN 2010年09月13日vol.1349掲載

 著作権が適切に保護され、利用される社会を実現するためには、「法(ルール)の整備と運用」「教育」「技術による保護」の三つのバランスが重要だと常日頃から主張している。

 ACCSの活動は、この三つのうちの法に関することに力点が置かれているように思われがちだが、実は教育・啓発に関する活動も熱心に行っている。その一つとして、このたび、ビジネスシーンにフォーカスした著作権解説冊子を作成した。

 企業には、ソフトウェアの違法コピーが入り込むリスクが常にある。そのために、ソフトウェア管理の徹底が求められるわけである。だが、問題はソフトウェアに限ったことではなく、写真や動画、地図など、他者が著作権をもつ著作物についても同様の取り扱いをしなければならないことが、あまり徹底していないことにある。著作物を著作権者の許諾なくコピーして利用すると、それがたとえ社内に限定したものであったとしても、ほぼ違法になるといっていい。企業には、そうしたリスクがつきまとう。リスクを軽減するためには、社員一人ひとりが著作権に関する正しい知識を身につけることが求められる。

 今回、制作した16ページの冊子『知って得する著作権』は、ビジネスソフト、新聞・雑誌、映像・写真・音楽、地図といった、企業内でよく利用される著作物の種類別に、企業内で起こりがちな著作権侵害の実例、その法的な解説、著作権侵害を防ぐヒントをコンパクトにまとめた。

 例えば、官公署に提出する許認可申請に添付する住宅地図を、著作権者の許諾なしでコピーして利用すれば著作権侵害に当たること、侵害行為を防ぐための許諾制度などを見開きで解説している。難しいと思われがちな著作権法だが、新入社員と先輩社員の会話で説明するなど、分かりやすい工夫も凝らしている。ぜひ、企業で活用していただきたい。

 著作権に関する知識を確認するためには、検定試験を受けるのも一つの方法である。

 私が検定委員会の委員長を務めているビジネス著作権検定では、初級、上級の試験を定期的に実施している。この試験に向けて体系的に著作権を学べるように、公式テキストと問題集も市販されている。次回の試験は11月だ。今から勉強してトライしてみてはどうだろう。

 他人の著作権を侵害しないためではなく、自分や自社がもつ著作権を利用するうえでも、著作権を勉強して正しい知識を身につけてほしい。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
  • 1

関連記事

JCSSA ソフトの不正利用を題材にセミナー ACCSの久保田裕氏が講演

「違法ダウンロード」に罰則規定がない理由

真の意味での「ソフトウェア管理」

国際化する著作権侵害、対策は急務