SMBのシステム改革はこの手で! 活躍する「企業内ITC」の素顔
<活躍する「企業内ITC」の素顔>まとめ 意図的に上流工程からコンサル提案 一方で、独立系ITCとの“温度差”も
2010/09/02 16:04
週刊BCN 2010年08月30日vol.1347掲載
ITC資格がIT技術関連のほかの資格と同等に重要視された理由は、企業内で使われるITの変化や、国内IT市場の実情が背景にありそうだ。ITC有資格者の53.6%を占める大手ITベンダーのうち、ITC有資格者の人数が多く、積極的にITCのPGLを営業プロセスなどに組み入れているITベンダーは、年商100億~1000億円の中堅市場を狙うプレーヤーが目立つ。一方、全ITCの15.9%を占める中小ITベンダーは、同業他社である大手ITベンダーの「下請け」に甘んじて事業展開するだけでなく、地盤の地域で地歩を築くため、地場の中小企業へ入り込む手段としてITCを活用しているようだ。
中堅企業市場を地盤にもつ大手ITベンダーは、年商10億~100億円程度の中小企業から案件を取ることに苦労していた。案件額が小さくて粗利が少ないため、中堅企業向けに軸足を置いたほうが得策で、中小企業市場に目を向けてこなかったのも事実としてある。しかし、昨今の国内IT市場は中堅・大手市場が飽和状態になり、唯一残された市場として中小に向かう必要性が出てきたのだ。
ただ、中小企業市場を攻めるうえでの課題は少なくない。富士通システムソリューションズの若林修一・Web SERVEsmart営業本部第二営業部担当課長は「IT知識に乏しい経営者に、IT利活用のメリットを伝える“橋渡し役”になるのがITCだ」と話す。逆に、ITベンダー内にはいままで、経営者とITベンダーをうまく結びつける手段を欠いていたことは否めない。同じ領域で競合するNECネクサソリューションズの持田敏之・コンサルティング部長も、「NECというブランドがあるからシステム構築を依頼してきたが、提案という面では全然なっていない」という過去の反省のもと、企業とITベンダー側の同社のギャップを埋めるため、ITCを増強してきたという経緯がある。
「企業内ITC」を多数抱えるITベンダーのほとんどは、営業パーソンの人材育成プログラムにITCのPGLなどを適用している。最も多い400人以上の「企業内ITC」を抱える富士ゼロックスの宮崎晋一・ソリューション・サービス営業本部ビジネスパートナー営業部長は「自社の『営業メソッド』を構築し、それを具体的な行動に移すための体系化する部分で、ITCの考え方を取り入れた」と、プリンタの機器販売にとどまらずに「ソリューション・サービス販売」へと転換するなかで、ITCの制度は重要な役割を果たしたという。
しかし、富士ゼロックスなどのように「企業内ITC」をうまく活用しているITベンダーばかりではない。「企業内ITC」を抱える数で上位に名を連ねるITベンダーに取材を申し込んでも、「具体的な成果が出ていないので、取材に応じることができない」と、拒否するところが相次いだのも事実だ。人材育成や営業活動が明確化されておらず、組織で動くべき「企業内ITC」が個人の裁量で動いているケースは少なくない。
また、ITCが「中立的な立場」ということを明確にしていることが、かえって足かせとなっている。「企業内ITC」が営業場面に行けば、やはり自社のソリューションを企業など顧客に勧めざるを得ないというジレンマがある。こうした問題点を解消するためには、「企業内ITC」と「独立系ITC」の温度差を埋めるための連携強化だけでなく、地域の金融機関、他の協力会社がうまく協業できる体制を築く必要性がありそうだ。
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