視点

あらゆる調査入札案件を「仕分け」せよ

2010/07/29 16:41

週刊BCN 2010年07月26日vol.1343掲載

 毎日のように各省庁から調査案件の入札が公告されている。例えば、6月中の経済産業省の調査入札案件を数えてみると、なんと60件。すなわち、毎日2件が公告されている計算になる。他の省庁も含めれば、もはや全体にどこからどんな案件が出されているかをフォローするだけでも大変である。

 ITと関連の深い総務省を例に中身を見ると、「電子署名および認証業務に関する調査研究」「情報セキュリティに関する効果的なユーザーサポートの調査研究」といったものである。いずれも重要なテーマながら、包括的に過ぎるうえ、(1)何のために調査するのか、(2)今調べるべきテーマか、(3)結果をどう活用し、今後につなげるのか、疑問ないし不明な感も否めない。

 さらに申せば、金融ITや情報セキュリティに関する案件のうち半分くらいは、「私に聞いてくれればアバウトながら答えられるのに…」と思うような内容である。この「視点」欄の執筆陣のように、有識者は各界にいる。まずはそういう方に聞いて、なお不明な点のみ調査する扱いにすれば、調査趣旨が明確になり、対象範囲も的が絞れるなど、スマートな仕組みとなる。

 過去の調査結果を見ても、例えば、(1)法人取引に関する問題を、個人ユーザーからのアンケートにより結論づけていたり、(2)IT初心者に関する問題を、ネット上のヘビーユーザーに答えさせるなど、一見して調査手法がミスマッチな事例が見受けられる。また、海外の情勢調査が含まれていることも多いが、限られた経費のなかでまともな調査ができず、既存文献の切り貼り的引用に終わっている例も少なくない。

 以上あれこれ見てくると、入札案件のなかには、(1)調査を開始した当初は意味があったが、年月の経過で形骸化したもの、(2)調査しなくても他の手段で大方分かるもの、(3)実際問題として調査することが難しいもの、が多く含まれているのではないか。そんな感想をある人に漏らしたら、「道路工事と同じだから」とのご意見であった。要すれば、ある時期になると、前年と同じところを掘り返して予算を消化する、というのである。

 これを当てにしているシンクタンク等も多そうだが、ここはぜひ本腰を入れた「仕分け」を実施して、意味のある調査だけを、意味のある格好で入札にかけていくべきであろう。より過激には、いったん全調査入札案件を停止して、「果たして誰が困るのか?」を見てみる手もアリかもしれない。
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