視点
2D/3D変換が3Dブームを加速
2010/07/08 16:41
週刊BCN 2010年07月05日vol.1340掲載
実は2D/3D変換技術は、これまで実用になるのかが危ぶまれていた。空間・時間でのコントラストや色の変化、細かな情報の動きなどから、ある決まったアルゴリズムに従い、物体を奥行き方向に再配置するのだが、問題は画質だった。ハリウッドには、すでに数十社から変換ソフトの売り込みが来ているが、ほとんどが使いものにならない。例えばあるメーカーの業務用2D/3D変換機は、明るい色を手前に、暗い色を奥に配置する。「青空を背景にした赤い顔の人物」の場面では効果的に3D化できるが、「夕焼けの茜空を背景にした青白い顔の人物」の場面では、顔が後に引っ込み、赤の空が手前に出てきてしまう。
ところが『アリス~』が事態を変えた。2D/3D変換で、これほどのクオリティが達成されるとは驚きだ。こうなると、現実的には、3Dで映画を撮る費用と「2D撮影+2D/3D変換」のどちらが安いか、という算段が成り立つ。単純にいって、純3D撮影は2Dの倍近い費用がかかる。一方、2D/3D変換はリアルタイム変換ではなく、オペレータが一コマずつ、映像を見ながら手動で調整するので、1分あたり600万円もかかる。2時間映画なら10億円だ。しかし『アリス』のように大ヒットすれば、回収も可能だ。撮影の手間は、2Dのほうが圧倒的にやさしい。3Dでは特別な撮影が必要だが、2Dならこれまでの撮影ノウハウがそのまま使える。
ハリウッドのスタジオは、数十年前からの劇場用3D映画を多数擁しているが、そのほとんどが駄作、劇場用3D映画元年といわれた2005年(ディズニーの『チキン・リトル』が今回のブームの嚆矢)以降に制作された作品は、意外に少ない。過去のカタログ大作を3D化できれば、3Dコンテンツが一挙に増える。さらに映画の3Dブームが加速され、それは家庭での3D待望を惹起する。
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