視点

ITベンダーとITユーザーの意識の違い

2010/04/28 16:41

週刊BCN 2010年04月26日vol.1331掲載

 中小企業のIT化は、IT利活用にあたっての専門的知識の乏しさや、IT導入にかかるコストの負担といった理由から、なかなか進まない状況にある。こうした状況を打開するために、クラウドコンピューティングといった新たなITが進展しているなかで、インターネット経由で安価な情報処理サービスを提供する「SaaS」の活用・普及といった取り組みや、各地域の中小企業のIT化を支えるITベンダーの供給力強化などによって、中小企業との連携を図ることができる仕組みづくりを行っていくことが重要である。しかし、地域内の中小企業が地域ITベンダーをあまり知らないといった実情や、地域ITベンダーの信頼性を訴求する環境が整っていないといった課題がある。

 その背景として、日本の情報サービス産業は、全国に約1万7000社が点在し、その8割は50名未満の中小企業であることが挙げられる。売上高ベースでは7割以上が東京都と神奈川県に集中しており、多くの地域中小ITベンダーは首都圏に所在する大手ITベンダーの下請けに依存している構造となっている。また、地域の中小企業からみれば、情報サービスに対する質的・量的な不足感がある。しかし、地域ITベンダーも下請け構造から脱却して地元企業や市町村あるいはさまざまな地場産業などへのIT供給を模索する動きも出てきた。昨年度、経済産業省がITベンダーのIT供給力指標を調査・開発し、全国ITベンダー情報データベースとして公開を始めたが、これはITユーザーはもちろんのことITCや商工会議所、金融機関などビジネスマッチングの仲介者向け情報としても利用価値がある。

 ITユーザーは、ITやネットを利活用して経営の効率化、生産性、競争力を向上させたいと思っている。だが、ITベンダーのホームページには理解できない用語が踊り、どんなスキルの人材を抱えているといったような、大手ITベンダー向けの訴求内容であることが多い。IT供給力指標とは、ITユーザー視点での表現を基本としている。あるITユーザーとのヒアリングのなか聞いた「ITベンダーはプログラム開発して納品したら仕事が終わりと思っているが、ITユーザーは受け取ってからが仕事」という言葉がすべてを表している。ITユーザーは、きちんと使って「ITの効果が出る」ところまで面倒をみてくれるITベンダーを求めているのだ。

 この意識のずれを解決することによって、ビジネスマッチングが大きく前進することは確実である。
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