IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>135.小坂工務店(下) 「工事進行基準」対応システムを導入

2010/04/22 20:45

週刊BCN 2010年04月19日vol.1330掲載

 青森県三沢市で総合建設業を営む小坂工務店(小坂仁志社長)は、1991年に財務システムの電算化から始まり、1993年にLANの構築、2000年には富士ゼロックスの「Docuworks」を用いた文書管理システムの導入など、矢継ぎ早にITによる経営改善を行った。

 そんななか、トップダウンの施策断行に限界を感じていた小坂社長は日本政策金融公庫青森支店に相談。IT経営応援隊の経営者研修会を経て、財団法人21あおもり産業総合支援センターのIT経営成熟度診断を受けることにした。そのときに派遣されたのが、ITコーディネータ(ITC)の澤田徳寿氏だった。IT経営成熟度診断は、ITコーディネータのサポートを受けながら、企業自身が経営課題やビジネス競争力を自己診断して、現状が個別最適なのか、部門最適なのか、それとも全体最適まで達しているのか、立ち位置を明確にしたうえでIT経営の方向性を短時間に見つけ出すことができるというものだ。

 澤田ITCは「社員だけを集めてディスカッションを行うことで、現状のIT経営の成熟度についての全社的な意思統一を図った」と話す。

 このコンサルティングやIT経営成熟度診断の結果をもとに、経営を改善していくために以前から導入しようと考えていた文書管理システムをベースとする「工事進行基準」対応のシステム導入を決意した。

 小坂工務店では、以前から取引のあるITベンダーのプライムビーピーにシステム構築を依頼。小坂社長はプライムビーピーについて、「当社に売り込みに来たのがきっかけで、こちらの要求をかなえてくれるかどうかを尋ねた。その結果、コンサルティングもできるというので選定した」という。また、社内で社員を中心としたIT委員会を設置、委員長を地場のSIerから招聘するなど、第三者からの意見を積極的に取り入れる体制を構築していった。

 これまでは工事の完成と引き渡しで売り上げを計上する「工事完成基準」を採用していたが、建物などを完成させなければ赤字工事であるかどうかが分からないケースも多かった。「工事進行基準」に対応することによって、月次決算で収益を計上して赤字やトラブルを早期発見し、軌道修正ができるというメリットがある。小坂社長は、「あわせて、工事進行基準にひもづけた出来高制の給与体系を整備した。各現場監督が経営視点で責任もって利益を管理、計上することで赤字工事の縮小につながる」とその効果を語る。

 工事進行基準システムは2009年12月に試験稼動。今年6月以降から月次決算を実施していく方針だ。(鍋島蓉子●取材/文)

工事進行基準を導入し、赤字工事の縮小につなげる
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