視点

テレビの味方!?「結ばれあっていたい人々」

2010/04/01 16:41

週刊BCN 2010年03月29日vol.1327掲載

 先頃、電通が発表した『2009年日本の広告費』によれば、昨年の新聞広告費は前年比81.4%の6739億円へと落ち込み、ついにインターネット広告費(7069億円)に追い越されるに至った。これで、いわゆる「マスコミ4媒体」のうち、テレビを除く3メディアが、広告媒体としてインターネットの後塵を拝することとなった。こうした事態が相次ぐなかで、メディア界では、このところ「インターネットに侵食されるマスメディア」という文脈で語られる言説が目立っている。だが、今回の話題は両者の共生の可能性に関するものとなる。

 またぞろ、ネタ元がニューヨーク・タイムズで恐縮なのだが、2月24日号に「ウォーター・クーラー効果:インターネットはテレビの味方になり得る」という記事が掲載されている。職場に置かれている冷水器の周りで交わされる会話をさして、ウォーター・クーラー・トーク(ゴシップ)というと辞書にあるが、この記事のウォーター・クーラー効果とは、ライブ番組を放映するテレビをバーチャルに取り囲みつつ、ネットで盛り上がるやりとりが日常化しており、それによってテレビ視聴の感興がいっそう高められていることをいう。

 例えば、先日のバンクーバー冬季オリンピックのテレビ中継が、過去アメリカで放映された(地元開催のそれを除く)冬季オリンピックのなかで史上最高の視聴成績を記録したこと、同じく今年のスーパーボウルが同国のテレビ史上最高の視聴率を達成したことなどの背後に、TwitterやFacebookなどを介して「互いに結ばれあっていたい人々」の存在がはっきりと認められるというのだ。ニールセンの調査によれば、ビッグ・イベント中継を視聴した人たちの7人に1人が、同時にネットにアクセスしており、スーパーボウルやグラミー賞授賞式を中継したCBSの幹部が抱いたという「インターネットは敵ではなく味方だ」との認識は、広く共有されつつあるようだ。

 マスコミュニケーション論の有名な仮説の一つに、「コミュニケーションの二段階流れ」説というものがある。これは、購買行動にせよ投票行動にせよ、人々はマスメディアからの直接的インパクトに加え、身近な仲間からの影響というフィルターを通して最終的な行動決定をするという仮説であるが、今回のトピックスはネット時代の新たな「二段階仮説」の構築を要請するものかもしれない。この点を含め、いずれ再論したい。
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