IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>126.地域ITC団体の取り組み(下)

2010/02/18 16:40

週刊BCN 2010年02月15日vol.1321掲載

■プロフィール
団体名:モノづくり応援隊in大田区
設 立:2005年8月
所在地:東京都大田区
活動内容:大田区を中心に中小企業のIT化をサポートしている。2008年1月にNPOとして再スタートを切った

企業内の人材育成など支援を広げる

モノづくり応援隊in大田区で
企画委員長を務める前田幸穂理事
 今年度(2010年3月期)、NPO(特定非営利活動法人)「モノづくり応援隊in大田区」の活動として目立ったのは、中小企業庁の委託事業として採択された「平成21年度新現役チャレンジ支援事業(モデル事業)」である。大田区内の中小企業が掲げている経営課題に対し、同NPOの会員がもつ中小企業支援の経験や中小企業向け経営戦略策定モデルなどのノウハウを活用することで効果的な経営支援を実施した。09年9月から10年1月末まで活動。十分な成果が得られたという。

 事業の実施にあたって、「新現役人材」と呼ばれる、企業で活躍したOBなどを募集して、そのメンバーに対して中小企業のコンサルティング手法を習得させるトレーニングやセミナーを実施。募集したメンバーをNPO会員として招き入れた。その人材とともに、大田区の中小企業が抱える経営課題の解決に乗り出した。具体的には中小企業へのヒアリングや訪問で経営課題を聞き出して支援する。新現役人材を通じて実施した数は65件に達したという。また、大田区内の中小企業連携による製品の受注を図る仕組みづくりを支援。中小企業の連携数は9件にのぼった。この委託事業は昨年度も採択。同NPOで企画委員長を務める前田幸穂理事は、「複数の中小企業をマッチングするのは、NPOを設立した理由でもあるので、大きな成果といえる。今後は、ITコーディネータとして長い間活動してきた経験と、委託事業で培ったノウハウを生かしながら、大田区の中小企業をさらに支援していきたい」との考えを示す。

 1月末に委託事業が終了し、次のステップとして進めているのは中小企業に対する経営研修会だ。事務局長を務める川鍋豪理事は、「事業承継や資金調達をはじめ、各中小企業の幹部を対象とした教育などを実施していく計画を立てている」という。また、設立当初15人程度だった会員が、現時点で40人程度まで増えていることから、全会員を対象に定期的な連絡会を改めて設け、「中小企業のために、今後どのような支援を行うべきかを模索していきたい」という意向だ。プロジェクト管理委員長の田中憲之理事は、「ユーザー企業の幹部が会員になっているケースがある。今後は、中小企業の会員を増やし、さまざまな角度から最適なプロジェクトを創造していく」と意欲を燃やしている。

 「中小企業のIT化は、全体的にまだまだ遅れている。IT導入をうんぬんする前に、経営を抜本的に改革しなければならない」と前田理事は考えており、「中小企業を成長に導く策を講じることに努力を惜しまない」という。

 任意団体から始まり、NPO設立を果たした「モノづくり応援隊in大田区」は、中小企業の集積地である大田区を活性化しようと懸命だ。経営改善からITツールの導入までを網羅して中小企業の革新を図る役割を果すITコーディネータが集合体を形づくれば、地域を活性化させる力になることがよく分かる。

モノづくり応援隊in大田区では、主要メンバーが集まって中小企業への支援策を模索している(左から田中憲之理事、川鍋豪理事、前田幸穂理事)
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