視点
「by IT」が国内IT業界を救う
2010/01/07 16:41
週刊BCN 2010年01月04日vol.1315掲載
ユーザー企業の多くは、新規IT投資に財布の紐を未だ締めている。同時に、固定費削減の一環として、運用保守の“お守り”に係る予算の削減に懸命だ。
この間に、仮想化環境やクラウド/SaaSが台頭した。いわゆる「オンデマンド・システム」が拡大し、ハードを中心とするITインフラ販売は、壊滅的な打撃を受けた。基幹システムの主軸x86サーバーは、09年の年間販売台数で初の45万台割り込みの可能性すら出てきた。
ただ、ITインフラを「所有しない」流れは、一方でITの最適化を促し、地球環境に優しいものへと変貌させている。皮肉にも、生産性向上の面で日本企業の足かせとなっていたITの「部門最適」が、「全体最適」へと導かれつつある。ハードを主体に“売る”IT販社にとっては厳しい状況が続くが、09年に学んだことは次代に生かすことができる。
マクロでみると、2010年は「グリーンIT」への注目度が高まる年だろう。言い換えると「スマートグリッド」への取り組みが社会インフラの隅々まで波及する可能性があると考える。09年は、国内IT業界やユーザー企業が、「コスト削減=環境配慮」という手法を体得した。環境対応を行うことがコスト削減を生む一石二鳥の対策であり、国内IT業界は、この1年間に貴重な体験を積んだ。
産業界は、製造業を中心に中国や韓国など外需獲得に動く。需要が乏しい国内から新興国へと舵を切り、急場を凌ぐと同時に将来の市場開拓を進めている。一方のIT業界は、一部大手SIerはともかく、パッケージベンダーを中心に、総じて海外進出が苦手。しかし、仔細に観察してみると、機器に改良を加えてCO2排出量を減らす「of IT」はもとより、IT化によって排出量を減らす「by IT」の経験は豊富で得意ということが分かる。
多くの新興国が日本のITによる環境への取り組みを“輸入”したがっている。政府には、発展途上国へ資金を投じるだけでなく、人的貢献として「by IT」を輸出し、国内IT業界の進むべき道筋を示してもらいたい。
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