IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手
<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>121.共立電機製作所(上)
2010/01/07 16:40
週刊BCN 2010年01月04日vol.1315掲載
生産の「見える化」で課題払拭
神奈川県川崎市にある金属部品の精密機械加工業者である共立電機製作所は、国内の経済規模縮小や先端産業の海外拠点への移行などによる世界的な構造変化に対応するため、海外拠点で加工を行う必要があるとして、1993年に中国の上海に進出。拠点が遠隔地に分散するため、社内の情報共有化を迫られ、その課題解決にはIT化が必要と考えた。そこで、ITシステムの導入で生産の「見える化」を実現し、管理業務の高度化で、さまざまな課題解決に成功している。同社がまず導入したのは、設備稼働管理システムである。静岡県袋井市と中国の上海にある同社の工場で、設備それぞれの稼働状況が時間や量、台数単位などで把握できるようになった。生産工程それぞれの問題が、設備の稼働状況に現れると判断し、「リアルタイム設備稼働管理システム」と呼ばれるソフトをシステム会社と共同開発した。その結果、遠隔地のマネジメントも瞬時に本社から指示が出せるようになった。
設備の稼働に着目したのは「納期遅れを未然に防ぐためには、各社員の能力を把握し、怠業を防止し、各加工現場のマネジメント力の向上と仕事の質を高めることが必要と判断したため」と、岸本良信代表取締役は理由を説明する。納期を管理する際、1日や1週間などの単位で受注品の数を確かめて、遅れそうだと判断すれば指示を出すのが普通だ。しかし、同社の場合は「リアルタイムに設備が稼働しているかどうかを遠隔からでも把握できれば、トップが生産状況を把握しながら、問題を早期発見・解決することができ、社員の業務マネジメント向上につながる」。つまり、設備稼働状況の管理に加えて社員の業務マネジメントにも効果を期待しているのだ。
「加工業者の多くは、受注を増やすために、取引先からの無理な要求も呑んでしまうケースがある。しかし、結果的に無理な価格での受注、品質低下、納期遅れにつながり、取引関係を壊す危険性がある」と、岸本代表取締役は訴える。1日単位の設備稼働時間を決めるのは現場だ。「社員の判断力とマネジメント力などを伸ばしていきたい」との考えがある。
同システムを導入したのは2007年から。今では、稼働率が導入前と比べて平均30%程度は上がったという。納期についても、「無理な案件について、価格面や納期延長など取引先と交渉できるようになった」。もちろん、受注品が順調に仕上がっている一方で稼働していない設備があれば取引先からの依頼を積極的に引き受けることにもつながっている。社員の能力を高めながら、なおかつ納期遅れの解消、安定した受注などを実現しているわけだ。
ITコーディネータ(ITC)の阿部満氏は、中小企業IT経営力大賞2010の申請支援で、IPAの紹介を受けて共立電機製作所に関わっている。阿部ITCは、「これまでのシステム構築の足跡に敬意を払いながらも、今後は販路開拓や世界で競争できる体制づくりなどで協力したい」と抱負を述べる。
・(下)に続く
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