視点

真の意味での「ソフトウェア管理」

2009/12/03 16:41

週刊BCN 2009年11月30日vol.1311掲載

 今年5月に石川県庁で違法コピーソフトの使用が見つかったことは、以前にも触れた。この後、同じような事例が青森県の弘前市役所でも発覚し、弘前市が賠償金を支払うことで、このほど権利者との和解が成立した。

 ソフトウェア管理は、比較的多くの自治体で実施されていると考えられるが、適切に運用されていなければ安心することはできない。油断すれば不正にコピーされたソフトが入り込んでくる。ソフトウェア管理は、常に継続していかなければならず、またそうでなければソフトウェア管理ができているとはいえないのである。

 そこでACCSでは、現在、ソフトウェア管理を推し進める2件の事業を行っている。

 一つは「ソフトウェア管理者養成講座」の開講だ。この講座では、(1)組織内における不正コピーの発生原因や現状、ソフトウェア管理をめぐる社会的要請、(2)ソフトウェア管理の実施にあたって必要となる著作権法、使用許諾契約(ライセンス)の基礎的知識、(3)ソフトウェア管理の具体的な導入手法と運用に必要な監査実務について、半日をかけて解説する。

 講座を受講し理解度確認試験に合格した方には、「修了証明」を発行する。ACCSでは、10年以上前からソフトウェア管理の手法をまとめたパンフレットを作成、配布するなどの活動を続け、ソフトウェア管理の重要性を訴えると同時に管理体制をバックアップしてきた。今回の「管理者養成講座」は、企業が自ら継続できる体制づくりを一層推し進めようとするものだ。11月27日に実施するが、10月下旬に募集を開始したところ、2週間で60社以上から応募があった。

 もう一つの事業は、国立高等専門学校(高専)全国51校に対して、ソフトウェア管理に関する講師を派遣するもの。これは独立行政法人国立高等専門学校機構から依頼を受けたもので、ACCSは、各高専が教職員に実施する研修会に職員を派遣し、ソフトウェアの使用に関わる法律や不正コピーの原因とリスク、不正コピー対策としてのソフトウェア管理の手法について、高専特有の管理状況を勘案した留意点などを交えて解説する。

 企業など組織における個人情報をはじめとする情報の管理を徹底しようとするなら、ソフトウェア管理が最初の一歩になることは間違いない。今回の事業を通して、日本は世界で違法コピー率が一番低い国になるものと期待している。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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