MADE IN SILICON VALLEY 現地日本人IT技術者たちからのメッセージ
No.12 シリコンバレーのニューチャレンジ 善戦したOpenMoko オープンなプラットフォームを目指して
2009/11/12 16:18
週刊BCN 2009年11月09日vol.1308掲載
モバイル進化の歩み
モバイルLinuxに興味を抱いたのは、今から9年前のことだ。米国に立ち寄った時に購入したPDAのVtech HelioのオリジナルOSからPicoLinuxをインストールしたのが最初である。米国に移住してからは、ヒューレット・パッカード(HP)のiPAQを購入。これにはFamilia Linux上にGPE/Opieが動作した。GPE/Opieは、グラフィックユーザーインタフェース(GUI)のGNOMEやKDEにあたり、ようやくボタン式携帯電話から本格的なモバイル時代の夜明けを迎えた。これを実装した製品もすぐに登場したが、グラフィックチップなどが不十分で、簡単な操作はともかく、動画などはとても快適とは言えなかった。時代が進んでハードウェア的に十分なスペックをもち、すべてが快適になったのは、2007年初頭以降である。完全なオープン目指すOpenMoko
OpenMokoは台湾の携帯電話メーカーFIC(First International Computer, Inc.)が始めたプロジェクトだ。最初のプロジェクトが開発したプラットフォームはOSにLinuxカーネルを組み合わせ、ウィンドーマネージャーにEFL/GTK+/Qtを採用した完全なオープンソーススタックである。対するアンドロイドもLinuxカーネルだが、GUIはWebKit、そしてJavaに特化したプラットフォームとなっている。プロジェクトはFICから独立し、第2のプロジェクトが始まった。OpenMokoをベースにした開発者向け携帯電話NEO1973の開発である。この製品は2007年7月にリリースできたが、この年の1月にはiPhoneが登場、11月にはアンドロイドも登場してOpenMokoは挟み撃ちとなった。昨年3月には、ハードウェア開発ベンダーの開拓のためにこの製品のCADデータをオープン化(Creative Commons License)、同6月にはその後継となるNEOフリーランナー(Neo FreeRunner)も発売したが、時すでに遅し、すべての話題はアップルとグーグルに集中していた。
OpenMokoは善戦した。しかし、巨大企業とこんな小さな会社が戦うのは容易なことではない。今年6月、OpenMokoは開発を停止し、今後はコミュニティーに委ねるとの決定を下した。シリコンバレーのOpen mokoUSAもレイオフを断行した。Open MokoだけではなくTrollTechのGreen PhoneもNokiaの買収で中止に追い込まれたが、これらオープン指向のモバイルが時代を引っ張っているのは間違いない。
【著者紹介】 大田 弘 米国シリコンバレー在住。ABOOM LLC社CEO。ERP導入からインテリジェントツールの開発まで企業基幹システム構築を手がける。渡米以前はタイ国で教鞭を取っていた経歴をもつ。Linuxガジェットには、目がない。家族(妻と娘)第一を信条とするプログラマ。 |
- 1