IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手
<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>112.「IT経営力大賞」シリーズ 旭鉄筋(上)
2009/10/29 16:40
週刊BCN 2009年10月26日vol.1306掲載
コスト管理で経営力を高める
鉄筋工事業の旭鉄筋(富山市、井本秀治社長)は、ITコーディネータ(ITC)と二人三脚で経営改革に努めてきた。徹底したコスト管理や、自社の強みや弱みを分析するSWOT(スウォット)分析などを通じて経営戦略を明確化。厳しい受注環境が続くなかでも、2005年以降、連続して増益を成し遂げてきた。ITCと井本社長が密接に連携することで、経営力を高めた成功事例である。鉄筋工事はコスト管理がとても難しい業種だ。鉄筋の部分は元請けのゼネコンからの支給品だが、加工と施工はコストとの闘い。施工現場は複数に分散しており、日々必要とされる施工員の人数が異なる。
例えば、10人で1日がかりの現場もあれば、3人で午前中だけの作業で終わる現場もある。天候に大きく左右される状況下で、現場のリーダーは、「人が遊ばないよう、どれだけ綿密かつ柔軟な作業工程を立案できるか」(井本社長)で、収益が大きく変わってくる。
1990年代前半のバブル崩壊前後までは、「鉄筋施工の職人技があれば、メシは食える」(同)と考えていた。だが、90年代中盤以降、構造的な不況に突入すると、赤字で終わる年度が目立つようになる。ちょうどその頃、井本社長は実父から旭鉄筋の経営を引き継いだタイミングだった。経営者向けのセミナーに参加したことがきっかけで、吉田ITCと出会った。ITC制度が発足する以前でもあり、当時の吉田氏は地元有力SIerの北陸コンピュータ・サービスに勤めていた。その後、吉田氏は独立して起業。2003年にITCの資格を取得した。
吉田ITCは、「経営者としてスタートする時期が重なったこともあり、互いに悩み、よりよい方策を考える日々が続いた」と振り返る。財務諸表を突き合わせながら議論を重ねた。そして、まず着手したのは、赤字プロジェクトの撲滅だ。
それまでの旭鉄筋は、財務は税理士任せで、決算から1~2か月後にようやく損益が分かるという状態。個々のプロジェクトの損益に至っては“どんぶり勘定”に近かった。吉田ITCが揃えた原価計算のシェアウェア(1万円弱)と市販の表計算ソフトを組み合わせた簡単なプロジェクト管理の仕組みで、損益管理がスタートした。
しかし、直後から壁にぶつかった。損益管理のベースとなる日報が揃わないのだ。 井本社長自身、現場で作業をしているため、疲れ果てて帰社してから日報を書くのはつらい。「挫折しかけるたびに吉田ITCに励まされ、再度、日報づくりへの意欲をかき立てる」(井本社長)という繰り返しだった。
プロジェクトの採算が見えにくい状態が続くなか、転機が訪れる。それは社員の“意識改革”だった。社長だけが焦っても会社は動かない。「社員一人ひとりにコスト意識をもってもらう仕組みをつくろう」という吉田ITCの助言がきっかけとなった。(つづく)
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