視点

本格化する超解像技術開発

2009/09/25 16:41

週刊BCN 2009年09月28日vol.1302掲載

 以前、この欄で「解像力をきれいに向上させる」超解像技術について書いたが、その時点で採用していたのは東芝の液晶テレビだけだった。ところが、この秋は業界レベルではBDレコーダー、テレビ、プロジェクタ……と採用例が予想外に増えた。メーカーの研究開発現場では、超解像について手掛けていないところはないという勢いになってきた。なぜ、採用するメーカーが増えているのかというと、いま、テレビが直面する二つのニーズに対応するからだ。ひとつが「低解像画像をいかに見えやすくするか」ということ。すでにテレビにネット機能がつくのは当たり前になっているが、You Tubeなどの低画質映像を大きな画面に映すと、目も当てられない。放送も同じだ。ワンセグ画像は、携帯電話用の小さなディスプレイならまだしも、カーナビ用の比較的大きなサイズに投映すると、信じられないほどボケボケになってしまう。超解像技術は、これらをそれなりに見やすい映像にする。集眉の急のニーズだ。

 一方で、「フルHDを大きな画面に拡大するから、超解像が欲しい」というニーズがある。それがプロジェクタに導入したケース。100インチ以上の大きなスクリーンに映すと、さすがのフルHD画像でも厳しくなるが、そこで、超解像技術を入れることで、細部の情報量豊かな映像に仕立て上げることができる。実は私のシアターでも、元祖超解像ともいうべきソニーの「QUALIA001」という映像プロセッサー経由で、150インチのスクリーンに投映している。これほどの大きなスクリーンでは、超解像的な映像情報活性化の仕組みが必要だからだ。だからプロジェクタに超解像機能が入るのは、当然のトレンドだ。

 本命は、4K×2K(水平4000×垂直2000画素)ディスプレイだ。NHK放送技術研究所の「技研公開2009」でパナソニックの103インチ・4K×2Kプラズマディスプレイが公開されたが、今後、さらに解像度が増える趨勢にある。しかし、4K×2Kコンテンツはこれからつくるわけだから、まったく不足している。そこで今のフルHDを上手くアップコンバートしてくれる超解像が期待されるわけだ。東芝では、この秋にアメリカで65型の4K×2K・液晶テレビの発売を予定しており、Cellプロセッサでの超解像が搭載される。いまある映像資産を未来に活かすという意味で、超解像への注目はさらに高まるだろう。
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