IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手
<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>108.「IT経営力大賞」シリーズ 共栄電業(上)
2009/09/25 20:45
週刊BCN 2009年09月28日vol.1302掲載
全社一体の経営計画を策定
大阪府を中心に、交通信号機など電気通信設備の設計や施工を手がける共栄電業は、ITコーディネータ(ITC)の手によって、業務プロセスの改善を実現した。同社は、10年以上前からITシステムを導入するなど、建設業界のなかでは比較的早い時期からIT化に取り組んできた。これは、業界の談合で大阪の関連団体が公正取引委員会から勧告を受けたことが発端となり、同社にも指導が入ったことがきっかけだった。笠島浩一社長は、当時、社長就任2年目。「経営の甘さを痛感した」と振り返る。同社を成長に導くためには、経営革新を図らなければならないと判断し、「ITを活用して業務を改善する」ことを決めた。当初は、パソコンを導入してパッケージソフトを使った業務フローなど簡便なものだったが、「目に見えて効率化が進んだ」という。そこで、年を追うごとにシステムを増強。「ある程度システム導入が進んだ段階で、中期経営計画を策定した。ITを積極的に活用することが前提だった」という。しかし、この計画は経営者からのトップダウンの方法で、ビジョンのアピールやビジネスモデルを構築していた。その結果は、「社員がついてきてくれなかった」。
笠島社長は頭を悩ませた。そんな時、ITコーディネータの経営計画セミナーに出会う。セミナーに参加すると、「いかに自分が独りよがりで経営計画を策定していたかが分かった」。セミナー講演者は「ITC-Labo.」の理事長(現・代表理事)を務める川端一輝ITCだった。笠島社長はセミナー後、さっそく川端ITCへ相談する。川端ITCは、「話を聞いてみると、理論武装した戦略ではあるが“頭でっかち”と感じた」という。ITを活用して何を行いたいのかが伝わってこなかったそうだ。そこで、「社員が納得する経営方針をまず立てるべき」と川端ITCは判断。まずは社員に経営を理解させるよう、コミュニケーションの活発化を提案した。それを受けて、全社員が意見を出し合って、改めて中期経営計画を策定。笠島社長は「その結果、ITを活用することの重要性、業績を伸ばすために自分がどのポジションにいるのか、社員が理解してくれた」という。
共栄電業が中期経営計画を策定したのは、3年前。この時点で、川端ITCはIT化の助言をあえて行わなかった。業務プロセスの改善が必要だったからだ。「まずは、社長が抱いている『成長するための意識』を社員に浸透させなければならなかった」(川端ITC)という。社員が当事者意識をもち、会社のあるべき姿を理解した段階で、川端ITCは共栄電業の強みや弱みを把握する「SWOT分析」を実施。これをもとに、今では増収増益を果たす会社に成長しようとしている。昨年度(08年10月期)は売上高16億3500万円(前年度比63%増)で、前年度で赤字だった経常利益が1700万円と黒字に転換した。
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