MADE IN SILICON VALLEY 現地日本人IT技術者たちからのメッセージ
No.8 シリコンバレーのニューチャレンジ オープンソースが支えるクラウドの世界(上) 百花繚乱の隆盛ぶり
2009/09/25 20:45
週刊BCN 2009年09月28日vol.1302掲載
無数のオープンソースたち
先行するアマゾンWebサービス(Amazon Web Service=AWS)を支えてきたのは、オープンソースと、その考え方だ。まずソフトウェアをみると、AWSを稼働させるOSはLinux、仮想化技術はXenだ。仮想マシン上で利用できるOSもFedora/Red Hat、open SUSE、Ubuntu、Debian、Gentooなど各種Linux、その後のOpenSolarisなど、すべてがオープンソースである。これらの経験の上にプロプライエタリなWindows Server 2003が追加された。もちろんOSだけではない。データベースのMySQLやPostgreSQL、アパッチDerby(Apache Software Foundation=アパッチ)、Webサーバーのアパッチhttpサーバー、アプリケーションサーバーでもアパッチJeronimo、Jboss、GlassFish(Sun MicrosystemsのJavaシステム製品)など、言語でもJava、PHP、ルビー、スプリング、パイソンなど、どれもオープンソースである。また、リチャード・ストールマン氏が始めたフリーソフトウェア活動のGNUプロジェクトでは、各種コンパイラー、コマンド、クラスライブラリーなどを作り出し、コピーレフトのライセンスGPL(General Public License)も生み出した。
オープンソースの基盤を整備
事情こそ違え、グーグルやセールスフォース・ドットコムも同じだ。自分たちの持ち味を生かしながら、同様のアプローチ手法を採っている。グーグル・アップエンジン(Google App Engine)の場合は、自社検索システムのために作り出した分散プラットフォーム上で稼働させることを特徴とし、Webアプリケーション作成言語としてパイソンとJavaをサポート。そして、このプラットフォームのオープンソース版も登場した。ハドープ(Hadoop)だ。ハドープは当初、ヤフーが開発、現在はアパッチに寄贈されてプロジェクトとなった。昨年10月には、そのハドープをサポートする商用会社のクラウデラ(Cloudera)も登場した。SaaSとして名を馳せるセールスフォースの場合はもう少し事情が複雑だ。それにオープンソースではない。セールスフォース躍進のきっかけは、2006年に登場したアップエクスチェンジ(AppExchange)だ。これは同社のプラットフォームからAPIを切り出し、さらにSDK(Software Development Kit)を提供して、アプリケーション開発をユーザーに促すものとなった。この考えはオープンソースの心といえる。
【著者紹介】 森 洋一 米国シリコンバレー在住。日本ユニシス入社、リアルタイムシステム設計と開発、流通/オープンシステム・マーケティングなどに携わり、1994年より米国勤務。2002年退社、シリコンバレーにオフィスを開設、ジャパンエントリーとテクノロジーリサーチャーとして活動。著書「クラウドコンピューティング―技術動向と企業戦略」のほか、雑誌、新聞などにも数多く寄稿している。 |
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