地場有力ITベンダー 未来を語る

【岩手】 アイシーエス 地元に根付いたサービスを創造

2009/09/16 20:42

週刊BCN 2009年09月14日vol.1300掲載

 「地域活性化に地場ITベンダーの果たす役割」とは何か。創刊1300号を迎えた「週刊BCN」では、このテーマを掲げて全国巡回取材を敢行し、47都道府県の有力ベンダーの代表者からナマの声を拾った。国内で地域経済格差が広がるなかで、地場の中堅・中小企業を活性化させる“源流”となるのはITであることを確信している。地場ITベンダーが地域活性化で果たすべき役割はますます大きくなっている。はたして各社は、この重要な役割にどう応えているのか――。

 業種別の売上比率は、自治体関連が全体の75%と最も高い。民需は25%と、まだまだ低いが、徐々に比率が高まっている。県別の売上比率は、地元自治体を中心に80%を占めている。県外は20%だが、今後は伸ばしていく予定だ。

 東北地域は、情報サービス産業市場が1700億円規模といわれており、そのうち宮城県が1000億円を占めている。宮城県以外の東北3県は、700億円規模の小さな市場で案件を奪い合わなければならないということだ。ビジネスとしては、かなり厳しいといわざるを得ない。

 当社はこれまで、自治体を中心に堅調にビジネスを拡大してきたが、地方財政が厳しさを増していることから、業績が下向きになってきている。実際、これまで100億円規模だった売上高が、昨年度(2009年3月期)は90億円台に落ちてしまった。落ち込みをカバーするには、事業領域を広げなければならない。その事業領域の拡大に向けて3年前から組み込みソフト開発に着手したが、予想以上に厳しい。そこで、地元に根付いた新サービスを創造していくことにした。

 その一つはNTTドコモおよび県立大学と共同で新サービスの開発を進めている「携帯電話を活用した津波に関する緊急情報提供サービス」だ。一般ユーザーへの提供に加え、漁業向けサービスにも仕上げる。漁業者が出漁中に津波に遭った際、どこへ避難すればいいかをGPS(全地球測位システム)と連携させて活用できるようにする。8月に予備実験を行った。これを精査し、商用化を模索する。

 また、県外の売上高比率を伸ばすために、当社が得意とするソフトを大手のメーカーやSIerなどにOEM(相手ブランドによる製品供給)を行っている。案件ごとに6社に提供した。そのなかには、四国の2社と協業するなど、これまで事業領域としてまったく想定していなかった地域で当社の技術を活用するユーザーが増える素地が固まってきた。この協業は、契約書を交わすといった類のものではないが、“緩やかなアライアンス”を数多く増やすことで業績伸長を目指していく。

◇アイシーエス
代表者…邨野善義 代表取締役社長
売上高…94億円
利益率…2億6000万円(経常利益)
主要顧客…地方自治体
ハードとソフトの比率…2:8
県内・県外比率…8:2
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外部リンク

アイシーエス=http://www.ics.co.jp/