地場有力ITベンダー 未来を語る
【プロローグ】大塚商会 大塚裕司社長が語る「地方、中小企業の実情」
2009/09/16 20:42
週刊BCN 2009年09月14日vol.1300掲載
北海道から九州まで全国を網羅する営業体制を敷き、中堅・中小企業(SMB)を主なターゲットに、製品販売とSI・サービス事業を手がける大塚商会。同社の大塚裕司社長は、首都圏市場と地域市場の違い、そして中小企業のITの実情をどうみているのか。各地域ベンダーの現状と戦略を紹介する前に、全国規模の有力SIerトップの見解を紹介する。
大塚裕司社長が語る「地方、中小企業の実情」
中小企業では、経営者一人の考え方次第でITに投資するかしないかが決まる。ITを戦略的なツールと考える人もいれば、コスト(金食い虫)とみるトップもいる。したがって、経営者に対して「ITは経営に欠かすことができないツール」であることをきちんと伝えることが、大企業以上に大切だ。私は、もしITというものが存在しないならば、社長にはなっていなかっただろう。「経営にはITが必須」と身にしみて感じているからだ。大塚商会の業績がそれを証明している。10年前と比較した場合、従業員数はほとんど変わっていないが、損益分岐点は約20%も下がった。1999年に社内のITシステムを刷新したのを機に、社員一人ひとりの生産性が向上したおかげだ。また、描いた経営戦略を具体的な施策に落とし込む際にも、ITがなければ実現できない。気合と根性だけでは、企業経営などやっていけない。
当社は全国でイベントやセミナーを開催し、さまざまな問題解決のためのソリューションを紹介している。そこで、参加者に「こんな格好いいことができるんだ」「これでこんなにコストが下がるんだ」と少しでも思っていただけるように提案している。それで興味をもっていただければ、さらに突っ込んだ具体的な提案ができる。
今、どこの企業も取り組んでいるコスト削減や生産性向上についても、提案すべきことはいくつもある。例えば、意外に見落としがちだが、通信回線の見直しで経費圧縮を図ることが可能だ。モバイル環境を整備すれば生産性向上や交通費削減だけでなく、万一の事故・事件に素早く対応できる「事業継続」にも寄与する。
主要商圏と地方を比較すると、デジタルデバイド(情報格差)は依然として縮まっていない。それはユーザー企業だけの問題ではなく、ITを売る販売店でも同じことがいえる。日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA=大塚裕司会長)の活動を通じて感じるが、主要商圏と地方にいるITベンダーでは入手している情報の“濃さ”が違っていて、情報に飢えている印象がある。
直近の地方市場をみると、政権交代の影響を注視している。新政府が予算をどの程度絞るのか──。地方では公共系の仕事が多いだけに、切実な思いで行方を見守っているのが実際のところである。(談)
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