IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>105.「IT経営力大賞」シリーズ 草加葵(下)

2009/09/07 16:40

週刊BCN 2009年09月07日vol.1299掲載

IT導入に向けた人間系の整備へ

 埼玉県八潮市の草加葵(安達宜秀社長)は、大正5年創業の繊維・建材の老舗が、米菓専門企業に業種転換。急速に売り上げを伸ばしたが、97年、柱だった取引先を失い、倒産寸前に追い込まれる。ITコーディネータ(ITC)の小林勇治氏と力を合わせ、新システム稼働を目指していた矢先のことだった。

 安達社長は、融資を受けていた金融機関の説得にあたると同時に、産学共同による商品開発と、新しい販路として百貨店の開拓を目指した。そんなとき、「オンリーワン」の斬新な商品が担当者の目に止まり、東武百貨店から声がかかる。これを皮切りに、高島屋、大丸といった大手百貨店からの要請に応える形で出店。売り上げを急速に伸ばした。

 一方で、安達社長と小林ITCは、新システム導入に向けて、就業規則や商慣行の見直しなど、抜本的な業務改革を進めた。費用対効果を見ながら、従来のやり方を継続するものと、IT化するものとを選別。小林ITCは、独自の「ミーコッシュ理論」に基づいて、五つの視点からビジネス・システム両面の整備を行った。これは、「ハードウェア」と「ソフトウェア」に加え、経営理念・戦略、企業文化、組織などの考え方である「マインドウェア」、業務のやり方、データ活用などの「ヒューマンウェア」、そして商習慣・EDI、ネットワーク、コミュニケーションのルール「コミュニケーションウェア」を合わせた「ビジネスインテグレーション」で、はじめてIT化の効果を得ることができるというもの。

 システム発注先候補のベンダーには、業務フローからアウトプット帳票まで、詳細な仕様を見せた。「ポイントは、見積り書どおりの金額で終えること。細かい仕様書なので、ベンダーも見積りを出しやすいはず」と小林ITCは話す。コンペでは、破格の2100万円の見積りを出したカテナに発注。見積りどおりの金額で、満足いくシステムが構築できた。

 導入したのはEOS(オンライン受発注)システムである。量販店や直営店舗には電話回線を使ったハンディターミナルを置き、本社サーバーにオンライン発注。百貨店、通販などについては、FAXもしくは電話などで発注を受け、クライアント端末からシステムに入力する。受け取った発注情報は、本社サーバーからまとめて卸売業者に送り、出荷を指示。ネットワーク経由での受発注によって、手間のかかっていた発注作業を効率化できた。また、POSシステムではなくハンディターミナルによるEOSで、構築費用も大幅に削減できた。

 百貨店に展開する売り場は軒並み好調で、年間1億円以上の売り上げを記録する店舗がいくつも生まれた。こうして苦難を乗り越えて導入したシステムも、今また刷新の時期を迎えている。安達社長は「どのようなものにするかは、これから小林先生と決めていきたい」と含みをもたせている。
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