IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>100.「IT経営力大賞」シリーズ 鬼頭精器製作所(上)

2009/07/20 16:40

週刊BCN 2009年07月20日vol.1293掲載

納期遵守率を大幅に向上

 輸送機産業のメッカ・愛知県豊田市に本社を置く精密加工の鬼頭精器製作所(鬼頭明孝社長)は、ITを活用して納期遵守率を大幅に高めた。比較的受注環境がよかった2006年の時点で、納期の遅れが「後々大きな問題になる」(鬼頭社長)と判断。地元のあいち産業振興機構や中小企業基盤整備機構に相談を持ちかけた。そこで紹介されたのがITコーディネータ(ITC)の秋山剛氏である。経営改革が仕上げの段階に入った08年秋、世界同時不況が輸送機産業を直撃。受注は激減するも、「当社の経営品質はここ数年で格段に高まっており、これまで取引がなかった顧客からも引き合いが増えている」(同)と、鼻を高くする。

 鬼頭精器製作所の最大の課題は“納期遵守率”であった。03~04年当時の納期遵守率はわずか35%と低迷。つまり、6割余りの案件は納期が守れていなかったのだ。自助努力で改善に取り組んだり、ITベンダーに管理システムを発注したりと、さまざまな手を講じたが効果が現れない。そこで公的な経営支援機関を通じて秋山ITCを紹介してもらった。当時のシステムは、汎用的なデータベースソフト使って管理するものだったが、「システムありき、管理ありきの発想で、社員全員が参加するという仕組みが弱かった」(秋山ITC)ことが、効果が上がらない最大の原因ということが判明した。

 同社は、生産実績をデータベースに入力するなど、「ITリテラシーは非常に高い」というのが、秋山ITCの第一印象。しかし、検証を進めてみると、生産管理のためのシステムというより、販売管理・原価管理の性格が強く、納期を守るのに欠かせない本来の生産管理システムとしての役割が十分に果たされていなかった。「ITリテラシーは高いが、自ら活用し、発展させる段階には至っていない」というのが結論であった。

 そこで着手したのが“着眼点”を変えること。納期問題は、ITシステムだけにあるわけではない。業界慣習や社内ワークフローにも重大な課題が見つかった。まずはここを変えていくことから着手した。

 鬼頭精器製作所が受注する案件は、大手メーカーの試作品が多くを占める。発注元自身も本格的な量産に入る前の試行の段階で、受注時に納期が確定していないケースも少なくない。最終的に納期を決める際も、同社の営業担当者が製造工数を正確に把握することなく決めてしまうこともあり、「そもそも物理的に無理な納期設定もあった」(鬼頭社長)と、振り返る。

 改革では、受注時の納期交渉に加え、自身の製造工程をできる限り標準化し、必要な納期を容易に割り出せるよう取り組んだ。製販が連携して守るべき納期を割り出す仕組みであり、生産効率の向上や粗利益の改善も見込める。
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