IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>97.「IT経営力大賞」シリーズ スーパーホテル(上)

2009/06/29 16:40

週刊BCN 2009年06月29日vol.1290掲載

全店舗のIT統合も、緩めず改革

 「ITと感動のホテル革命」――。全国89店舗を展開する宿泊特化型ホテルチェーン「スーパーホテル」は1989年の創業以来、このテーゼを掲げ、ITを徹底的に駆使して省力・合理化を追求してきた。その結果、1泊朝食付きで4980円からという低料金を実現している。黄色の地に青文字で「スーパーホテル」と記された看板を知る人は多いだろう。ビジネスホテル業界では後発だが、今年3月のオリコン・リサーチの顧客満足度ランキングで堂々1位に輝いた。「安かろう、悪かろう」のホテルが散見されるなか、「安くて快適な宿泊」を提供して躍進を続けているのだ。

 創業者である山本梁介会長は、独身者向け賃貸マンションを管理運営する会社を経営する。そこですでに「ITで効率化する術や有効性を理解していた」(山本会長)と話す。「スーパーホテル」開業時には「ITビジネスモデル特許」である自動チェックイン機「ノーキー・ノーチェクアウト」システムを創案し導入。宿泊客はフロント脇に置かれた自動チェックイン機で宿泊料金を支払う。すると、部屋番号と暗証番号を記した領収書が出力される。入室時には、ここに記された番号をドアノブの端末に入力すると開鍵、部屋へ入ることができる仕組みだ。

 最近では他のチェーンホテルにも導入され、目新しいシステムではなくなったが、「スーパーホテル」が先駆者だったことは紛れもない事実である。このほかにも、ITを利活用した省力・合理化例は数多くある。その具体例は後述するが、同社の年間IT投資額は約3000万円に及ぶ。このうち保守・運営費を除いた“真水”で1000万円強を新規IT投資として毎年支出するほど、ライバルの追随を許さないIT改革を進めている。

 同社のシステムは自動チェックイン機だけでなく、ウェブを活用した予約管理やチェックイン業務、顧客管理、精算業務などフロント業務が一元的に管理されている。数年前、一部店舗を除き分散していた各店舗システムは東京のデータセンターに統合し、全国をオンライン化した。

 これだけITをフル活用する「スーパーホテル」に対し、ITコーディネータ(ITC)の本多茂氏(NPO法人WIT代表)が支援を始めたのは「システムがほとんど出来上がった頃」(本多ITC)と苦笑する。本多ITCは同社の次なるIT戦略を担う役割として関わっているのだ。

 本多ITCに課せられたのは要約するとこうだ。「ITを活用したさらなる生産性向上」、そして「従業員同士のさらなる情報共有」――。この命題を実現するために、大規模改修の真っ最中だ。つまりは、オンラインで一元管理された顧客や店舗別の業績データを、迅速に集約・情報共有し、顧客獲得に生かして生産効率をアップしコストを削減する方法を探ることといえる。こうしたIT利活用は、宿泊料金を下げることなどにつながり、最終的に顧客還元につながると考えている。(つづく)
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