視点

侵害防止に直接的な対策を

2009/04/27 16:41

週刊BCN 2009年04月27日vol.1282掲載

 新年度が始まった。ACCSは、平成21年度、これまで以上に著作権侵害対策に集中して活動するよう事業計画を立てた。著作権保護には、「法律・ルール」「普及・啓発」「技術的保護」のバランスが必要だと考え、活動している。この考えはこれまで通りであるものの、ファイル共有ソフトなどを悪用した著作権侵害をはじめとして、現在の被害状況は、これまで20年以上にわたって活動してきたなかで最も深刻な状況にあるといえる。こうしたなか、限られたリソースで活動を行うには、3点のバランスは意識しつつも、著作権侵害への直接的な対応に軸足を置かざるを得ないと判断した。

 著作権侵害対策については、「発生した侵害の停止」「被害の回復、侵害者への制裁」「新たな侵害発生の予防」という措置を講じ、これらの措置を循環させることによって、結果として侵害を減らすことを目的としている。つまり、差止・損害賠償請求などの民事手続きを活用し、悪質な事案に対しては刑事責任追及の支援を行うとともに、広報啓発・著作権教育を実施するのである。特に今年度は、既にインターネットなどで蔓延している侵害行為への対応を緊急の課題として取り組むため、現在、実際に侵害を行っている者と、近い将来に侵害を行う可能性の高い者を対象として絞り込み、それらに向けて具体的な対策を打つ。


 ファイル共有ソフトによる著作権侵害の実態がいかに深刻かは何度かこの欄でも報告してきたが、ACCS会員会社だけが被害を受けているのではなく、音楽や映像などあらゆる業界が横断的に取り組むべき問題である。そのために、ACCSをはじめ関係団体が設立している「ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会」においては、例えば、ISPの協力を得てファイル共有ソフトを利用していると想定されるユーザーに対して直接メールなどで警告を行うといった具体的な対策が検討されている。これはACCS単独の事業ではないが、ACCSが事務局となっており、積極的に推進していく。


 なお、ACCSの意思決定は、年2回の総会のほか、毎月開催される理事会で行われる。今回の新しい活動方針を遂行するにあたり、日常会務についての決定を行う委員会は、新たな事業内容に即して再編し、理事会の意思形成を「ボトムアップ」の形で支援していく方針である。この機会に、ぜひ業界をあげて侵害対策に取り組むべく、ACCSへの参加をお願いする次第である。


 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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