視点
産学連携で創造性豊かな技術者育成を
2009/03/09 16:41
週刊BCN 2009年03月09日vol.1275掲載
時間や内容がままならないといったことは、どんな業界にもあることだ。ただ、その仕事に魅力や誇りを感じ適切に評価されていれば、決して「3K」などとは感じない。情報産業界には魅力も誇りもないのか。当然のことながら「否」。やりがいが一杯に詰まった業界のはずである。とすれば、情報産業界において若者を受け入れる側と送り出す側が、若者に対して「ものづくりの魅力」を強く伝えていかなければならない。それが今欠けているのではないかと感じている。
では、その魅力を若者に伝えるためにどうすべきか。沢山の提言が期待できるが、筆者はまず「社会と共に次世代技術者を育成する共同教育(Cooperative Education)」(以下「COOP教育」)の推進を提唱したい。北米で約100年前にスタートしたCOOP教育は、現在では広く世界各国で普及している。COOP教育は、「教室での学習と学生の学問上・職業上の目標に関係する分野での、有益な職業体験を統合する組織化された教育戦略であり、これにより理論と実践を結びつける斬新な経験を提供するもので、産学官が連携して取り組むべき事業」と定義されている。単なる就職・雇用対策や工学・技術訓練等の制度ではないのだ。
COOP教育の日本での取り組みは最近のことであるが、その先進的な調査研究に関心が高まっている。ここで共通するテーマは、長期インターンシップ制度の確立、産学官の連携による教育のフィードバックシステムの構築などである。
COOP教育の核となる長期インターンシップは、長岡技術科学大学の29年にわたる実績(4~5か月にわたる教育システム)が名高いが、筆者が身を置く長野高専でも2003年から14~15週の長期インターンシップを必修で実施し、大きな成果を得ている。この経験をした学生は、とにかく「良い顔」で学校に戻ってくる。企業におけるものづくりの魅力や、会社、そして経営者の生き様を体ごと感じてくるからだと思う。
この長期インターンシップと学校での授業とを、うまく組み合わせてCOOP教育を実践すれば、情報産業界の魅力は必ず若者に伝わる。「柔らか頭脳と確かな技量」が創造性豊かな高度情報社会を築くのであるから、企業や学校はCOOP教育を視点に入れた一層前向きな行動を起こすべきであると思う。
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