IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>83.「IT経営力大賞」シリーズ 久恒衣料(上)

2009/03/02 16:40

週刊BCN 2009年03月02日vol.1274掲載

14万点の品目管理するEDI構築

 衣料品店「アビ・ヒサツネ」を9店舗擁する久恒衣料(久恒達也代表取締役)。九州地方を地盤とし、大分県に6店舗、福岡県に3店舗構え、ネット通販サイトも運営する。年商は約30億円、1971年設立で、40年近くの営業歴がある小売業だ。久恒達也氏は二代目社長。実父からバトンを受け、経営の陣頭指揮を執っている。

 「アビ・ヒサツネ」は、大分県人によれば「『ファッションセンターしまむら』の大分県モデル。大分で知らない人はいない」といわれるほど、地元では有名な衣料品店だ。店舗は売場面積が広大なのが特徴で、しまむらやユニクロに比べて面積は約3倍に及ぶという。そのスペースのなかに、老若男女を選ばない服飾品や下着、寝具から雑貨、靴までを揃え、約14万点もの商品が所狭しと並べられている。

 膨大な数の商品を取り揃えていることは、久恒衣料にとって最大の強み。だが、その一方で課題も生じる。商品管理の複雑さだ。

 全商品について、POSシステムから打ち出される毎日の売れ行き情報をチェックする。それに合わせて商品ラインアップを練り直し、品揃えを変更する。そんな当たり前の施策を進めるのも、14万もの品目があればひと苦労。久恒衣料は、ユニクロなどのSPA(製造小売業)とは違い製造機能を持たず、服飾品メーカーから商品を調達して売る。それだけに、商品を揃えるために膨大な数の服飾品メーカーと取引する。その数は国内外合わせて約600社。そうなると、仕入先を巻き込んだ大規模なSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)が必要になってくる。

 そこで、久恒衣料は製品調達担当者(バイヤー)と売場担当者、服飾品メーカーの3者間で情報共有できるEDI(電子データ交換)システムを構築することを2006年1月に決めた。その直後、知人の紹介で知り合ったITコーディネータ(ITC)横山昌司氏をサポート役に招き入れる。同年3月、開発投資負担を軽減するために、経済産業省の助成事業「中小企業IT化促進事業」に応募。採択された結果、同年6月にシステム開発をスタートさせた。

 情報システムを刷新することで狙っていた効果は、売れ筋と死に筋をリアルタイムで把握し、それに合わせて調達する商品プランを練り直し、売場のレイアウトを変更すること。そのためには、バイヤーと売場担当者、服飾品メーカーの3者が同時に情報を共有できなければならない。そこでネックになるのが、膨大な商品数だった。

 システムのうえでは3者間で情報のリアルタイム管理、各商品の売れ筋・死に筋が分かっても、その結果をもとに迅速に調達商品を変更し、売り場を変えるのは容易なことではない。単品管理に限界を感じていたのだ。そこで、久恒衣料は、14万点の商品を約100カテゴリに分けて管理する手法を取り入れ、EDIシステムに反映させた。

 カテゴリでの管理とは、生活や利用シーンに合わせて各商品を久恒衣料が独自に一括りにして陳列、管理するもの。例えば、流行色が紫であった場合、紫のシャツに似合うジャケットやコート、帽子などをシステム管理上一括りにして、陳列も同じようにまとめる。各商品ではなく、カテゴリ単位で売れ筋と死に筋を把握することで、膨大な商品の入れ替えを迅速化させた。(つづく)
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