IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>81.「IT経営力大賞」シリーズ 第一交易(上)

2009/02/16 16:40

週刊BCN 2009年02月16日vol.1272掲載

IT活用型経営革新で収益力高める

 内装仕上工事をメインに建設業を営む第一交易(富山県南砺市、西能徹社長)は、過去10年にわたってITの利活用を積極的に進めてきた。1999年に販売・工事管理システムを本格稼働させ、これをベースに経営品質の向上に力を注いでいる。

 ITバブル崩壊後の02年に建設着工件数が激減。取引先の倒産による貸し倒れなどで一度は赤字に陥った。だが、ITを活用する基本を忠実に実践することで収益力を着実に向上。07年度(07年12月期)からはITコーディネータ(ITC)による経営指導を受けながら、事業計画の精度を高める取り組みに力を入れている。

 同社では、内外装工事、住宅のリフォーム、建築資材を販売。土木資材の製造工場も自前で運営する。本店は南砺市で、富山に本社、金沢に支社を展開。施工サービスから資材販売、土木資材製造など多様な事業を展開することから、販売・工事管理のシステムは独自に開発した。既存パッケージのカスタマイズに資金をつぎ込むより、自社に最適なシステムを開発したほうが得策だと判断したためだ。システムの開発は中堅・中小企業に強いメーカー系のSIerに依頼した。

 開発では、まずプロトタイプをつくってユーザーの意見を聞き込む。その後、案件の見積もりや資材発注、施工など、建設業で必要となる業務プロセス単位で分割して納入した。開発を請け負ったSIerでは約20人の開発人員を投入。およそ1年かけて完成にこぎ着けた。基幹業務系に加えて、グループウェアソフトも導入。本社や支社、工場の情報共有を促進する。

 システムが稼働し、ビジネスも順調に拡大するかに見えた。だが、ITバブルが崩壊するなど景況感が悪化。売り上げを伸ばすことを重視するあまり、利益管理への手当てが十分にできていなかったことが収益を圧迫した。売掛金が未回収のまま取引先が倒産。一転して赤字に陥った。売り上げの追求だけでなく、「利益の管理にこそ重点を置くべき」(西能社長)と、経営手法やIT活用のあり方を見直す。こうした取り組みの結果、今では客先に見積もりを出し、資材を調達し、施工、納品するまでの一連の業務の流れのなかで、粗利に責任をもった人材が着実に育ってきた。

 ITCとの出会いは、取引先の北陸銀行の経営者研修会に招かれた際だった。そのとき講師を務めていたのが梶野達也ITコーディネータ(ITC)である。研修会で梶野ITCは、企業の持つ強みや弱みなどをもとに経営戦略を立案するSWOT(スウォット)分析などの手法を使って丁寧に経営を掘り下げていく。こうした手法に感銘を受けた西能社長は、07年度からの事業戦略のコンサルティングを梶野ITCに依頼した。
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