視点

改正労働基準法を吟味する

2009/02/09 16:41

週刊BCN 2009年02月09日vol.1271掲載

 労働基準法の改正法案が昨年12月5日に可決成立した。改正内容は「時間外労働における割増率のアップ」と「年次有給休暇の時間単位の取得」の2点となっている。

 まず、時間外労働における割増率のアップに関しては、使用者が1か月につき60時間を超えて時間外労働をさせた場合、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないことになった。従来25%の割増率が50%と倍になったわけであるため、労務コストが企業経営を圧迫することにもなりかねない。そのこともあってか、50%の割増賃金の支払いに代えて「休暇」を与えることによって代替することも「労使協定の締結」を条件に可能とされている。


 2点目の年次有給休暇の時間単位の取得とは、労使協定(社員代表者との協定)の締結を前提に、5日以内を限度として「時間単位の年次有給休暇取得」が認められたことだ。年次有給休暇の取得率は、この10年間の統計では平均50%を切っており、政府が目指す100%の取得率達成のための仕組みである。朝、病院に立ち寄って出社する場合や、勤務時間中に私用で外出するような場合には便利な制度であるが、管理が非常に複雑になってくる。


 この二つの労働基準法の改正は、業務ソフトにも多大な影響を及ぼすものと考えられる。例えば給与計算ソフトでは、割増率の設定が必要になり、勤怠管理と連動させてうまく処理できるようにしなければならない。また、人事関連ソフトでは、時間単位の有給の管理ができるように求められる。そのせいもあってか、この改正された法律の施行は来年の2010年4月1日となっている。


 これらの改正の理由は、長時間労働がメンタル不全の主たる原因である点にある。しかし、この法律改正により、実務担当者の負担が増えることは間違いのないところであり、制度改正には、こういった実務の運用面も視野に入れた視点も大切ではないだろうか。


 


(注) 1か月60時間を超えた場合の50%の割増率は、当分の間、中小企業には適用されない。

──「労働基準法の一部を改正する法律(2010年4月1日施行)」第138条より、その要旨をまとめて注意書きとした。──

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