視点

「分散&接続」から「集中&接続」へ

2009/01/26 16:41

週刊BCN 2009年01月26日vol.1269掲載

 インターネットの向こう側にあるリソースを利用して情報処理を行う「クラウドコンピューティング」の利用が拡大している。インターネット経由でソフトを利用するSaaSもその一種である。

 このクラウドコンピューティングは、情報処理の形態からみれば「分散」から「集中」へという変化のように見える。情報処理の中心が大型汎用機(メインフレーム)であった時代から考えると、情報処理の振り子は「集中」から「分散」へ振れ、また「分散」から「集中」に戻ってきているように感じるのだ。しかし、ここに「分断」と「接続」という別の軸を加えると、別の見方ができる。


 つまり、「集中&分断」のメインフレーム時代から、パソコンによって「分散&分断」の時代へと移行し、インターネットによって「分散&接続」の時代が始まる。そして、SaaSやクラウドコンピューティングは「集中&接続」の情報処理だと位置づけられるのである。


 このメインフレームからパソコン、そしてインターネットというIT業界における相変化については、松田俊介氏の論文「業界標準の決定要因と最新動向」(『デファクト・スタンダードの本質』有斐閣)を参考にした。松田氏は、それぞれの時代は始まりから19年から20年でピークを迎え、次の波はそのピークの5年前に始まると指摘している。


 松田氏によれば、メインフレームの時代はIBM360が発表された1964年に始まり1984年にピークを迎えている。パソコン時代の始まりは最初の表計算ソフトであるビジカルクが発表された1979年であり、そのピークは1998年。そして、インターネット時代の始まりはブラウザソフトのモザイクが発表された1993年であり、2012年にピークを迎える。そして、松田氏は2007年に「バイオ・インフォマティックス」の波が始まると図を使って予言している。


 しかし、「分散」対「集中」、「分断」対「接続」という2つの軸で整理すると、インターネットがもたらした「分散&接続」の時代に続く波は「集中&接続」ではないだろうか。そして、それがクラウドコンピューティングとSaaSのような気がする。


 面白いのはそれぞれの時代の覇者が異なることである。「集中&分断」の時代はIBM、「分散&分断」の時代はマイクロソフトとインテル、「分散&接続」の時代はヤフーやグーグルであった。さて、「集中&接続」の時代の覇者はどこになるのだろう。

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