IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>78.「IT経営力大賞」シリーズ 大協組(下)

2009/01/26 16:40

週刊BCN 2009年01月26日vol.1269掲載

新システムで社内を改革

 鳥取県米子市に本社を置く大協組は、砕石業から始まり、土木、建築、温浴施設、産業廃棄物処理といった多岐にわたる事業を展開している。同社は2006年、オフコンベースのシステムのリースからPCベースの会計パッケージとカスタマイズによるシステムにリプレースした。

 4年前、オフコンのリース切れが迫り、小山典久社長がベンダーに問い合わせたところ、分厚い提案書が提示された。これでは話にならないと思った小山社長は取引銀行に相談を持ちかけたところ、ITコーディネータ(ITC)の上田治城氏を紹介された。

 上田ITCは大協組社内にプロジェクトを立ち上げ、新システム導入に向けての協議を開始した。経理、土木業務、温浴施設、砕石、産業廃棄物処理それぞれの業務フローを作成し、問題を洗い出して要求仕様書(RFP)を作成した。また併せてベンダーを選定するための評価基準もつくった。「すでにオフコンが入っていたため、担当者の専門知識面では問題なかったが、古いシステムで指揮してきた経理部長が、従来の業務のやり方が変わることに反対していた」(上田氏)と打ち明ける。

 05年6月、提案依頼説明会を開催した際には、反対を表明する経理部長が連れてきたベンダーも含め、3社がプレゼンテーションを行った。それらの提案をベンダー評価基準と照らし合わせて選定した結果、応研の会計パッケージ「建設大臣」を基に、カスタマイズによる費用対効果の高いPCベースのシステム提案と、砕石販売システムのノウハウをもっていたジェットシステムに開発を依頼することとなった。

 ジェットシステムの持田寿人・営業部係長は「業務分析するため、大協組の社員に話を聞いたが、非定型業務でも定型業務に転換でき、人員もそれほど必要ないことが分かった」と振り返る。だが、「経理部長が帳票の見方一つにしてもやり方を変えたくなかったようで、新しいやり方ではうまくいかないという内容の電話がかかってきたこともあった。まずそれが本当の情報かを現場の担当者に確認しながら改善していった」(土江昭司・開発事業部部長)。

 06年、新システムが稼働すると、変わりゆく社内の状況下で反対派は居場所を失った。経理部長は「最終決裁ができるのは自分以外にいない」と食い下がっていたという。ちなみに、現在の経理スタッフは勤務経験の浅い人ばかりだが、特に問題は起きていない。

 仕事の質が向上し、従業員の負担が大幅に減ったことはもとより、「人が変わったことにより、新システムにも適応しようと協力的で、前向きな社風に変わった」(小山社長)と評価している。

 「会社は人・モノ・カネで構成されるが、すべてをダイナミックに動かせるのは『人』だ。新システム導入が人の考え方の変革やモラルを向上させるチャンスとなった。社長としては社内変革が一番の成果だったのだろう」と上田ITCは総括している。
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